第4話 新しい洋服(前編)


『フルール、新しい洋服が欲しくないか?我が換金をしてきたからお金の心配はいらない』


「ルジェ様に買ってもらえるとは思いませんでした。でも、大丈夫です」


『ほぼ手ぶらで来て洋服は今着ている1着しかないのにか?』


「えっと、それは……」


『我では服を作ることは不可能だ。だから、大人しく我に買わせろ』


「で、でも、ルジェ様と一緒にいても、途中1人になる場面があります。例えば、下着の時とか」


『むう。確かにな』


『気にしなくてもいいわよ。私が一緒について行くわ』


「あれ、誰の声?」



 我がフルールと生活する上で最初に気にしたことは、服だった。人間界の中で重要とされる要素が衣食住だと聞いたからだ。


 だから、服を買おうとしているのに、何故か否定するフルール。でも、確かにフルールの言い分はわかる。


 その会話をしている時に、カルラがやってきた。こやつは雌だから、多分大丈夫だろう。からかわれることはわかっているが、渡りに船というやつだ。



『紹介するぞ。こやつは、カルラ。我の幼なじみだ。カルラ、この娘が我の妻のフルールだ。仲良くしてくれ』


『へぇ、フルールちゃんっていうのね。よろしくね』


「カルラさん、よろしくお願いします」


『で、さっきの話だけど、私も参加させてくれない?フルールちゃんが興味あるし』


『別に良いが、フルールを怖がらせるなよ』


『しないしない。じゃあ、フルールちゃん、準備出来たら行こうか』


「はい。ありがとうございます」



 カルラの介入により、何とか買い物に行けそうだ。カルラには感謝しないといけない。



『そろそろ人化の術使おうかな』


『我もそうするか』


「人化の術?」


『ああ』



 我は力を少しずつ抜いていき人になるよう意識する。まぶたを閉じ、少しずつ意識を高めて人の形を意識する。


 そして、目を開けたら、目の高さが元の我の高さよりだいぶ低くなっている。成功した。隣を見ると、カルラも成功していた。


 まぁ、ここまで生きてきたら失敗する方が珍しい。



「ルジェ様、カルラ様、その姿は?」


「我の人間の時の姿だ。これで、人間の町まで行けるだろう?」


「じゃあ、人間の町に行ってみようか」

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