騒ぎの後始末

 翌日の校門前は予想に反して静かだった。もちろん、響が親衛隊に連絡を入れて校門前で登校待ちを校舎入り口に変更させた事や登校時間自体を30分早めた事も関係あると思う。

 普段見慣れない制服を着た他校男子生徒が5、6人、校門が見える所でウロウロしている程度だった。

 男装していない響と三つ編み眼鏡の僕と手を繋いで堂々と登校しても何の反応もかったので気付かれていないと思って間違いないだろう。

 あとは学校内の問題、といってもすでに響が有名なので普段と変わらないはず。大騒ぎになるならすでになっていないとおかしい。


「おはようございます、響様!」

「女装した姿も素敵です、響様!」

「やあ、みんな、おはよう!今日は女の子モードだからそのつもりで頼むよ。口調も変えるからね」

「「「「はい!」」」」

「それで誰が犯人がわかったの?」

「はい、2年B組の野中昴。彼で間違いないと思われます」


 親衛隊からの報告はマスコミさんの情報と一致していた。

 隣の響にうなづいてみせる。


「ありがとう。助かりました。問題が大きくなるからここにいる人間だけの内緒ね」

「響様と秘密の共有!」

「墓場まで持って行きます!」




 2年B組に到着した瞬間に一人の男子生徒に土下座された。

 確認するまでもなく彼が中野昴で間違いないだろう。


「すまなかった。こんな事で許して貰えるとは思わないがどうか許して欲しい!」


 頭を床に擦り付けながら叫ぶように謝罪の言葉を口にする。


「まさか、"滝ノ内中の破壊神"がうちの高校にいるなんて思わないだろ?知っていたら絶対にしなかったんだ。信じて欲しい。もちろんこれからも絶対にしない」


 反省の方向性が違うと思う。恐怖で反省するのは反省とは言わないよ?


「相手次第で反省するの?それってどうなんだろう?」

「いや、本当に反省しているんだ。今後誰であろうと無許可で勝手に投稿なんてしない」

「わかったよ。今回はこれで手打ちでいいよ。次はないからね」


 頭を下げたままなので顔は見えないが中野の肩の力が抜け、ほっとする様子が見てとれた。それでもやはり釘は刺しておかないといけない。


「ありがとう、感謝するよ」

「感謝より先にネット含めて、色々とデータ削除しておく事をお勧めするよ。うっかりでも流出させて他人に被害を与えたら一巻の終わりだからね。進学は推薦を狙ってるんだってね?次があった時点で何しても絶対に無理だから」


 "誰か被害者"が出た時点で、ありとあらゆる手段を使って潰すから、もっと緊張感を持った欲しい。

 そういっても、ほとんどの事はマスコミさんがするんだけどね。


「そ、そうだな。今すぐに消すよ!!じゃあ!!」


 絶叫と共に立ち上がり走り出した中野は僕たちの前から姿を消した。

 隣で響がうなづいている。満足してもらえて何よりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る