ネット拡散

 学生の本分は勉強。御多分に洩れず、僕も帰宅後は課題を終わらせると、続けて復習と予習を済ませた。

 時計を確認し、そろそろ響が顔を見せる時間だと伸びをしているとスマートフォンに通知が入った。マスコミさんからの連絡だった。


『結構拡散されてる模様。用心されたし』


 動画サイトのアドレスが一緒に添付されていた。

 首を捻りながら開いたサイトで確認出来たのは僕がリングにシュートする昼間の体育の授業風景だった。

 上手くカット割りしているので背景には他の人は映っていない。淡々とパスを受けてシュートをする僕の姿だけだった。

 再生回数は一万回を超えたところだった。

 意味がわからない。

動画タイトルを見ると『シュートするへそ見せ美女』とのダサいタイトル。そもそも美女でも女の子ですらないからね。

 いや待って、へそだって!?

 シュートを打つ度に見えるへそ。それに合わせて歓声が上がる。

 なるほど、昼間の歓声はこういう意味だったのか――


「琢磨、お待たせ!寂しかった?」


 扉を開けて響が飛び込んで来て思考が中断された。おさげ姿の響も可愛い。

 そのままなすがままにハグされる。


「ネットでも大人気だって!流石、琢磨だよね。でも本人に無許可投稿で更にモザイク無しは悪質なマナー違反だから削除依頼出したよ」

「動画の件なら僕も今確認したところだよ。僕も削除依頼出しておくね。閲覧数からして体操服から学校は特定されてる可能性が高いけど、どうする?」

「そう言う思って準備してきたよ。はい、これでどうかな?あと、これと」


 響は胸ポケットから眼鏡を取り出し、自分のおさげを外すと一緒に渡してきた。

 受け取った眼鏡に度は入っていない様だ。所謂伊達メガネ。

 受け取った眼鏡を掛けておさげを取り付けると鏡に映ったのは本の似合いそうな地味っ子の真面目女子に見えなくもない。

 確かに雰囲気が別物なので一見だとバレる事はないだろう。しかし問題はそこではない。

 響がゴゾゴゾと手持ちの紙袋から真新しい制服の上着を取り出した。


「制服なら大丈夫だよ。一サイズ大きいのをお母さんが買ってきてくれたの。これでへそも見えないよ。ちょっと残念だけど」


 響がぼそっと本音をこぼす。


「部屋の中なら響の見たいだけへそでもなんでも見せるから外で見たがるのはやめて欲しいな」

「では、改めて堪能させて貰うね」


 遠慮なく触り出した響に、なすがままお腹を触らせる。うーん、普通は触りたがるのは男の方だよね。逆じゃないのかな?

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