響の腕前
帰宅後、女性らしい普段着に着替えた響が化粧道具一式と共に僕の部屋にやって来た。明日は二人の服装を交換して登校するのでその下準備の為だ。
身長は僕の方が高いとはいえ似た様なもの。
へそ位出ていても問題ないだろう。
手慣れている。その一言だった。
響の作業は目で追えない程スピーディーだった。
邪魔しない、まな板の上の鯉である僕はされるがまま、邪魔をしない。
化粧水、乳液で肌を整えた上にファンデーションを塗り、眉毛を描き、アイシャドウを入れ、リップクリームで唇に艶を出し、チークで頬に赤みを出し、最後にウィッグで髪を長くして作業は終了した。
「さあ、出来たよ!似合ってるよ、琢磨ちゃん」
響が楽しそうな声をあげた。満面の笑みを浮かべている。余程の自信作なのだろう。
鏡に映っている姿は肩まで髪のあるそれなりの"女の子"に見えなくもない。
それでも普段との差異に違和感を覚える。
「あとはムダ毛の処理をして完了だよ!」
脱毛クリームを手渡される。素直に脚に脱毛クリームを塗って待つ事10分。
「ツルツルだよ。完璧だね。本当にいい触り心地」
脱毛クリームを拭き取った脚に響が飛びついた。
破顔一笑の響に胸が暖かくなるが、世間一般的に男の脛や太ももは頬っぺたをすり付けて楽しむものでは無いと思う。
「幸せ。このまま眠りたいよ。おやすみなさいzzz」
止める間もなく響は爆睡モードに突入した。膝枕ならぬ太ももまくら、どうみても羞恥プレイだった。
それでも響を起こす様な無粋な真似は出来ない。諦めて響が目覚めるまで一緒に仮眠を取るのだった。
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