響親衛隊に取り囲まれる

 職員室から出た途端に響の親衛隊に囲まれた。


「凄いかったです、響様!」

「本当ですよ。あれだけの大観衆の前でのキスシーン、痺れました!」

「ははは、喜んでもらえたのなら嬉しいよ」

「それで先生達には何か言われましたか?」

「残念ながら口頭注意とはいかなかったよ。それでも交渉して反省文四枚で許してもらえる事になったよ」

「それにしても横暴ですよね。何もしていないのに反省文を四枚も書いてこいだなんて。私抗議します!」

「私も抗議するわ!」

「わたしも!」

「ははは、子猫ちゃん達、そう騒がないでくれたまえ。先生達にも面子というものがあるのだよ。ここは大人になって彼らの顔を立ててあげようと思うんだ」

「流石は響様!お優しい!」

「きゃあ、素敵!」


 響が処分内容を伝えて心配しないように言ったがしばらくの間、響を取り囲んだ集団の騒ぎは収まらなかった。

 本人達に自覚はないのだろうが響はただの出汁で、とにかく大声を上げてストレス発散したいのだろう。生暖かく見守ってあげよう。

 その時の僕はこの後に起こる事を知らずに呑気に構えていた。




「ねえ、君?有紗君だったよね。その髪留めのヘアピン、いくつかボクにもくれないかな?」

「よ、喜んで!響様にでしたらいくらでも差し上げます」

「ありがとう、助かるよ!」

「きゃあ!響様にお礼言われちゃった!!」


 親衛隊の有紗という少女が飛び跳ねている傍らで響が僕に振り返ると右手で僕の髪をかき上げた。

 響の趣味に合わせて僕の前髪は目にかかるほどの長さで揃えられていた。


「琢磨はボクのものだと宣言したからね。手を出そうとする不届き者が現れたとしても公然と撃退できるから、もう解禁してもいいだろう?」

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