第一局9巡目◉学びの共有
9巡目
◉学びの共有
※今回は専門知識の必要な回なので飛ばして読んでも大丈夫です!
「さて、ここでちょっと止めてこの局の学びを共有しようか」とスグルが言う。佐藤スグルは立会人兼顧問だ、それを提案する権利がある。
「まず、この局。カオリちゃんが凄かった。3巡目に捨てた六。これはなかなか切れないものだ。ユウの1巡目が九でありながら2巡目には西が出たことから六を持っていそうだと予想したんだよね?」
「全くその通りです」
カオリは驚いた。あんな誰も見てくれないであろう一打をしっかり思考まで理解してくれているなんて。これが、仕事で麻雀をやる人間ということか。
「なので、チートイツ本線の手がきたカオリちゃんは薄い上にど真ん中の六なんかいらないなと嫌う。それが幸いして残した牌は重なりチートイツテンパイ。一枚切れの西かまあまあ良さげな⑨の選択だけど、それなら一枚切れオタ風単騎にした方がアガりやすいだろうと⑨切ってリーチ。見事な手順でした、しかし…」
そう、しかし…だ。その手順はハメられていた。
「しかし、それを見こしていたのがアンナちゃんでしたね。序盤のど真ん中牌切りやリャンメンターツ落としを見て読んだわけだ。チートイツかチャンタか一色か単純に材料豊富で余ったか、決定は出来ないけど高確率で字牌を重宝してる手が入ってそうだと察して、西がもう無いという情報をタンヤオを犠牲にしてでもひた隠しにした。これが凄い!」
「えへへー。このくらいの捨て牌読みならお手のものですゥ。将棋の読みと違ってその先その先って考えなきゃいけないやつじゃないしね。麻雀は私の性格に合ってるかも!」
その後東2局以降特筆すべき手順はなく、初めてのゲームは竹田アンナのトップで終了した。驚くべきは、スグルが見る限り誰も手順ミスをしていない。
スグルは4人に麻雀を教えるつもりでいたがそれはとんでもない思い違いであった。既に4人は基礎は学び終えていて、むしろ自分が教えてもらうことが多そうだと、この半荘一回で痛感していたのだった。
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