第一局10巡目◉阿吽の差し込み
10巡目
◉阿吽の差し込み
気付いたらもう佐藤家に来て2時間半くらい時間が経っていた。
「あれ!もうこんな時間!?帰らなきゃ!」
麻雀をやっていると時間が経つのが早い。それは全雀士が認めるところだと思う。とにかく麻雀は時間を奪う遊びなのである。
「また明日も集まれる人!」そうマナミが言うとスグル以外の全員が同時にハイ!と言った。
「え、お兄ちゃん集まれないの?」
「変則シフトだからなあ。明日は多分難しいよ、また今度な」
「じゃあ部屋だけ借りるね」
「いいけど、あれこれ散らかすなよ?」
「承知!」
今日の所はこれで解散とし、また明日ここで麻雀をする。そう約束して財前姉妹と竹田アンナは帰って行った。
次の日
「りち」
オーラスにマナミがリーチしてきた。まだ3巡目で安全牌は字牌1枚しかない。マナミは西家で2着目。トップ目のカオリは北家で16800点差。つまり、8000直撃でも転落しないし、3000.6000をツモられても捲られることはないということ。そして何よりマナミのリーチ宣言のやる気のなさ。「りち」ってなんだよ。まあ2着でいいや。って言う気持ちが漏れてるような発声だ。
(この辺かな?)一発目だけ現物を切るとそれ以降は差し込みに回るカオリ。
「ロン。メンピン…2000」
「カオリ先輩ここから差し込みなんて厳しいです~!だいたいハネマンだったらどうするんですか?!」とオーラス親番だったアンナが言う。
「アンちゃんは麻雀上手なのはもう昨日わかったから。モタモタしてたらアンちゃんにリーチされちゃうかもでしょ?リーチ棒出されたら裏とか乗って満貫級になる可能性もあるから差し込めないし。それに私達は仮にも姉妹よ。マナミが考えることなんてお見通し。このリーチは絶対に安いって分かってたの。まあ、わざわざ役ありを差し込ませるためにリーチしてるとは思わなかったけど」
「へへ、ダマが普通かとは思ったんだけどね。でもリーチしたらカオリが差し込みするかと思って」
「悔しいいい!アンナはハネマンの一向聴だったのに!」
するとユウも
「私だってハネマン
「おー危な!」
今回、カオリの差し込み判断は完璧な選択であった。それをさせるために役ありをリーチしたマナミもまたすごかった。
これから先このようなハイレベルな攻防が佐藤家の中で数々繰り広げられることになる。その駆け引きは高校生とは思えない次元のものであり財前姉妹はこの六畳の空間でぐんぐん腕を上げていくのである。
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