第17話 たまには賢者モードに入ります
初期にはダンジョン内に少ししかいなかったサキュバスが何倍にも増えた。
「はぁ、はぁ、」
足りないなら増やせばいい。
俺にはそのスキルがあるのだから。
サキュバスから離れてマスタールームの装置をいじり始める。
まったく、ブラックだぜ。ダンジョンマスターなんてな。
こんなことしてると1日20時間くらい働いていた時を思い出す。毎日満足にものも食えなかった。
俺がここに来たのはそんな生活で過労死したからだ。
まぁ、どうでもいいか。
この世界に関しては、今まで遊んできたからツケが回ってきただけだろうな。
それよりも最近思うことがあった。
「ファラン。最近誰とヤっても満たされないんだ」
俺の股間に住む妖精、暴帝チンスタンティヌスが話しかけてきた。
この世界に来て男と会話することが殆ど無くなったから頭に妖精が住み着いていた。
「分かってるよ。俺もそうさ」
つまりマンネリだマンネリ。
毎日違う奴とやってるけどそれでも飽きというものが来てしまう。
「俺は時魔法にかけるつもりだ」
トキノから時魔法を吸収する。
それで俺の暴帝を幼くしてやればどんなものでも新鮮に感じるのではないか、ということだ。
「だが、どうやるかだよな」
ルゼルが言うには俺の体液にはかなりの中毒性があるらしい。
ルゼル達のような魔王軍には基本的にあまり効果がないが、ヒルダ達があぁなっているのはその中毒性のせいらしい。
中にはイザベラのように魔王軍サイドでも効果のある奴もいるらしいが。
「飲ませてみせるか?トキノに」
それで中毒になれば後はやりたい放題だ。
勝手に俺に擦り寄ってくるのだから。
股間に住む妖精はすっかり萎えていた。
俺と話すのも辞めてしまったらしい。
「あー、どうしようか」
詰まったなぁって感じ。
とにかくトキノに接触してみるしかないか。
それでも俺は毎日の習慣でドスケベ聖女に褒美をくれてやってから王城に向かう。
魔王城を歩いてどうするかを考える。
「おい魔王」
魔王の部屋を開けながら声をかけてみる。
「おいとはなんだおいとは」
「トキノってどこにいんの」
「今ならダンジョンにいるんじゃないか?」
そう返してきた魔王様に詳しいダンジョンの位置を聞く。
「なんか差し入れ持って行ってくるか」
それに液体突っ込んで飲ませよう。
飲ませたら俺の勝ち。
そうして移動してきたトキノのダンジョン。
現状魔王のダンジョンの成績ランキング上位を取り続けているのはこのトキノらしい。
真面目にモニターを見ていた。
優等生ってわけ。
遊び回っている俺とは大違いだ。
「よう」
「何?馴れ合わないって言ったはずだけど」
「いつも、頑張ってる君に差し入れだよ」
そう言ってアイスティーを渡す。
チョコレートも持ってきた。
俺って気が利くよなぁ。
「どうも」
そう言って一応受け取るらしいトキノ。
「驚いたよ、受け取るなんて」
「食べ物は無駄にしたくないし」
そう言って飲み食いを始めるトキノ。
だけど途中で異変に気付いたらしい。
「何混ぜたの?」
「何の話?」
しらばっくれてみるが素晴らしい嗅覚の持ち主らしい。
「毒みたいなものは効かない。摂取する前に体を戻せばいいだけだから」
チートみたいなことしやがってこいつ。
俺が馬鹿だったな。
そうだ。こいつには効かないんだこの手のは。
「体の一部を飛ばされても時を戻せばいい。私は倒れない」
そう言ってくるトキノ。
正攻法しかなさそうな気がしてきた。
のだが結局トキノとの距離は詰まらない。
向こうが距離取ってるからなぁ。
椅子を借りて色々考えていた時だった。
「うそ……」
今まで黙り込んでいたトキノが動揺していた。
「こ、このダンジョンにSランク冒険者が向かってきてる」
そう漏らしていたので俺も近寄ってモニターを見てみると確かにそこにはSランク冒険者がいた。
俺は以前勇者パーティにいたから分かる。
有名な冒険者だ。
そのパーティがどんどんこのダンジョンを駆け上がってくる。
「き、聞いてない!こんなの!少し前にダンジョンの構成を変えたばかりだから。対応できない!」
そうしていつか見たルゼルみたいにトキノは部屋を出ていこうとする。
「魔王様に伝えてきて。私はきっとここで倒れる、人間の侵略が始まったって」
そう言って走り出したトキノ。
瞬間移動でとりあえず伝えるだけ伝えてまた戻ってきた。
便利だな瞬間移動は。
だがその間にトキノは冒険者パーティと戦闘を始めていた。4vs1という圧倒的不利な状況。
俺も行こう。
「よう、ヒーローが来たぜ」
殴られてこっちに飛んできたトキノを受け止めながら声をかける。
「ぐっ!」
自分の時を早めたりして何とか応戦してたようだけど、時魔法は効果が強い分、魔力の消費も激しいらしく片膝を付いていた。
そう言えば言っていたな。トキノ自身に戦闘能力は殆どないって。
「逃げなさいあなたは。関係ないでしょう」
腕から血を流しながらそう言ってくるが
「俺はあんたを助けたいんだよ」
「えっ?」
初めて俺の顔を見た気がするトキノ。
「助けられても、私はあなたの願いなんか聞かない」
そう言ってくる彼女だけど俺は目指す未来がある。
少しの可能性でもあるならかけるし。死なれたらもうヤれない。
「別に見返りなんて求めてないさ」
そう言って俺は珍しくアイスソードを作り出した。
本当はアサルトライフルを手にした方が楽だろうけど、流石の俺もこの場面は真面目にいいとこ見せたくなったってわけさ。
その間もパーティのアサシンの子が目で追うのがやっとの速度で突っ込んでくる。それを先程から防御魔法で凌いでいる。
この子の攻撃力は低いがこの連撃にいつまで耐えられるか、だな。
ここで戦況を変える。
「ニブルヘイム」
凍てついた冷気がこの場を支配する。
それより下はないと言われている絶対零度の更にその下を行く温度の世界。
それがニブルヘイム。絶対零度以下は無いなんて常識など俺には通用しない。
ないなら作ればいい。
次の瞬間俺達に向かってきていたアサシンの速度がグンと下がった。
急激に下がった温度に体が動かないのだろう。
その女の子の頭を掴んで冷気を伝わらせていく。
「な、何故私の動きが……!」
「下手に動くなよ?潰しちまうぞこの頭」
パーティの回避型タンク役をこなしていた子の手足を凍らせていく。
「あ、アヤメ?!」
「そ、そんな!絶対回避のアヤメが!」
そうやって倒れたアヤメという少女に呼びかけるパーティ達。
だったが、やがて俺に気付いたのか1人の男が口を開いた。
「く、黒髪の男。ま、まさか……この前救難信号のあった【殺戮の荒野】にいた男ってまさか。な、何故ここに……」
俺は手足を凍らせて動けなくなったアサシンをその場に落とす。
「ご名答。それは俺の事さ。名前はファラン。覚えなくていいぜ」
どうせお前ら全員生きて帰れないんだから、な。
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