第13話 一兎を追う俺は二兎を得た


翌日。

俺はヒルダにミーナの教育を任せて魔王城にきた。


ちなみに男二人は強制労働だ。ほんとにきつい仕事をやらせている。

ダンジョンの快適性アップのための岩削りとか。


サキュバスにやらせてたら無理って言ってたから男共に押し付けた。

まぁいいか、奴隷だから。


今日も可愛い女の子を求めて、魔王城の庭園を散歩していた時のこと。


「な、なぁ。下半身丸出し野郎」


そんな時俺を呼ぶ声があった。

どんなあだ名だよそれと思う。


でも、そんな馬鹿なあだ名付くの俺くらいだと思って振り返ったらセオンくんがいた。


「俺にはファランという立派な名前があるんだが」

「ふぁ、ファランか。すまない。下半身丸出し野郎の方が言いやすくて」


言いにくいだろそれとか思いつつ話はしてやる。

気持ち悪いけど意外と憎めないタイプのやつだ。


「この辺りで女の子を見なかったか?」

「女の子ぉ?」


知らんな見てない。

そう答える。


「そうか。とても可愛らしい女の子なんだが」


そう言ってセオンくんが俺の背中側に目を向けた。

それから


「あっ!いたイザベラだ!」


イザベラ?その名前を聞いて思い出す。

あー、婚約者か。俺が手を出した。


走り出したセオンくんを追ってみることにした。


そうしてセオンくんが追いついて声をかけていた。


「い、イザベラ、待ってくれ僕だ」


肩で息をしながら女の子に話しかけていた。

セオンに振り返る少女。


それにしても不満そうな顔を包み隠していなかった。


「セオン?もう付きまとわないでって言ったよね??」

「付きまとってなんかいないさ」


そう言ってセオンは手紙をイザベラに渡していた。


「ほら、僕はほんとに君のことが好きなんだ」


そう言って渡していたが突き返されていた。


「気持ち悪いのよあなたの手紙」


そう言ってから俺を見るイザベラ。


「誰かと思ったら股間に脳みそがついてる人じゃない」

「安心しろよもう。別にやるつもりないから」

「よく言うわね」


性格きついなぁこいつ。

この性格のきつさだからイライラして俺は好き放題やったのになぁ。


「お前より可愛い子いっぱいげっちゅしたからどうでもいいよー」

「い、言ってくれたわね?!」


何故かムキになってくるイザベラ。

そんなイザベラにプレゼント、と渡すことにした。


あのとんでもない核爆弾を。


「そういえばこれ、プレゼント、あげるよ」


セオンからのラブレターだ。

セオン本人は忘れていたらしく不思議そうな顔で俺の手にあるものを見ていた。


「ふぁ、ファラン。思い出したぞ!お前イザベラに手を出したんだったな?!今度は完全に落とすつもりなのか?!」


そんなセオンを無視して手紙を渡す。


「何これ、あなたから?」


そう言いながら受け取ると取り出して目を通し始めるイザベラ。


「誰?このシオンって子」


読み終わったイザベラがセオンを見つめる。


「シオンはただの親戚の子さ」


核爆弾を思い出して慌てて誤魔化しにかかるセオンだけどもう遅かった。


「きしょ」


そう言われていた。

それどころか


「あっ!セオーン」


知らない声が聞こえてきて後ろを振り返った。

少女が走りよってきてセオンに声をかけていた。


「セオン。どうしたの?」

「し、シオンか?」


そう言いながら振り返るセオン。

この子がシオンか。


代わりに説明してやろう。


「なぁ、シオンちゃん。浮気してんだぜ?こいつ」

「え?」


俺の目を見てくるシオンちゃん。

イザベラから手紙を奪い取ってそれを見せてやる。


「これ、君に宛てた手紙だよ。本命のイザベラには送らずに君だけに送った手紙さ」


その手紙を見せられてシオンも


「きしょ」


セオンくんを見下していた。


「そ、そんな」


その場に崩れるセオンくん。

どう考えても浮気した上にきしょい手紙を書いたお前のせいだぞ。


さて、シオンちゃんに声をかける。


「君かわいいね」

「え?」

「良かったら俺とデートしない?」


そう声をかけたらイザベラが止めに来たが。

黙らせる。


「あ、あなたファランさんですよね?最近噂の」


と聞いてくるシオン。

噂かどうかは知らないけど頷く。


「ぜ、ぜひ、お願いします」


そう言って俺の手を握ってくるシオン。


「そ、そんなぁ〜」


去っていく俺に手を伸ばしているらしいセオンくん。

悪ぃな!ごちそうさん!


魔王城の風呂場でも借りようと思ったのだが


「何でイザベラがついてくるわけ?」

「あなたがその子に何かしないように見張るのよ」


今から何かする気満々なんだけどな俺は。

そんなことを思いながら風呂場の前を通ったが清掃中らしい。

仕方ない。


「魔王様いるかぁ?」

「いるが」


魔王様の部屋を開けながら声をかけると中にいた。

シオンは俺がいきなり中に入ったことに驚いているが俺は気にせず窓際に連れていく。


「この景色を見せたかったのさ」


俺はそう言ってシオンに窓からの景色を見せる。


「ここから見える景色はこの魔王城で見える景色のなかでも1番綺麗なのさ」


知らんけどそれっぽいことを口にする。

景色なんざ1度も見たことない。


俺が見ているのはいつも女の子の顔とおっぱいなのだから。


「うわ〜ほんとにきれい〜」


景色を見ながらそう呟くシオンの手を握って俺は決めゼリフを吐く。


「でもさ。こんな景色より綺麗なのは君だよシオン」

「え?」


顔を赤らめるシオン。

行けるぞ!行けるぞ!俺。


「ん……」


シオンとキスしてから、彼女の右足を持ち上げる。


「さぁ、僕の首に手を回して捕まってよ。皆に見てもらおうよ。僕たちの愛し合う姿をさ」


そう言って始める。


「あ、あんた何流れるように始めてるのよ」


魔王様は完全に仕事に熱中しておられるがイザベラが入り込んできた。


「お前帰っていいぞイザベラ。いつまで勝手に覗き見してんだよ。人が愛し合ってるんだよ」

「あっ……み、見られそうで恥ずかしい……」


顔を赤らめているシオン。

イザベラは帰っていい。


その間も俺の手はワキワキと動いていた。


「あっ……だめ、そこ、ファランさん」

「可愛いよシオン」


耳元でそう囁いているとイザベラが俺の横に来た。


「こ、こっち見てよ」


イザベラの方を見るとキスされた。


え?


「わ、私も後でしてよ。あ、あんたがその気にさせたんだから」


なんか分からんけどシオンを追ってたらイザベラも釣れたようだ。

ラッキー。


二兎を追う者は一兎をも得ずじゃないんだよ、間違ってるわこれ。

俺レベルになると、一兎を追うだけで二兎を得るんだよ。


何故かは知らんけど。

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