第10話 生き生きの森

この森は生き生きの森と呼ばれているらしい。

入った生命は皆生き生きし出すからそう名付けられたそうだ。


「なるほど。俺も生き生きしてきたな。妖刀のちん々丸が浮上してきたな」

「こ、この臭いは」


ゴクリと聖女が唾を飲み込んだ。

やばいと思ったがもう遅い。俺は俺を抑えられなさそうだ。


「おい!メスブタ!ちょっとこい」

「は、はい!」


グイッとリードを引っ張ると茂みに隠れて俺は聖女のケツを叩いて、ヤッた。


「ふぅ、ほんとに生き生きしやがるぜこの森は」

「ぅぐぅ♡……す、すごいです……こ、これがイキイキのモリなのですねぇ♡」


四つん這いで犬みたいになっている聖女のリードを引っ張って促す。


「ほら、犬みたいに歩けよ。行くぞ」

「ワン!ワン!」


四つん這いで馬鹿みたいな格好で歩いていくブタなのか犬なのかよく分からん聖女を連れてどんどん歩いていく。


「遅いぞ歩くのがこの駄犬」

「も、申し訳ございませんファラン」


そう言いながら歩いていく聖女。

飼い慣らしたら意外と可愛いじゃないか。こいつも。


あれだけ生意気だったのが嘘みたいだ。

くぅ〜。気持ちいいなぁ生意気だったメスを飼い慣らすのって。


俺のマグナムの前には生意気な娘もこうなるってもんよ。

あの時早まらないで殺さなくて良かった〜。


見に来てくれてありがとなエルザ!

お陰様で俺は今ご主人様だ。


「おい駄犬俺は歩くのが疲れたぞ」


そう言って俺は聖女の背中に乗った。


「お、重いです……」


べチャリと崩れる聖女。


「変態が、後で遊んでやるから頑張って走れ」

「は、はい」


はぁはぁ言いながら頑張って態勢を立て直すと、どこにそんな力があるのか知らないけど犬のように走り出す聖女。


「快適だなぁこれは。いい乗り物だ」

「は、はい!ご主人様!後でご褒美をください!」

「今くれてやるから。もっとスピードを上げろ」


ベしっとケツを叩いてやると速度をあげる聖女。

本当にスピードが上がった。


とんでもない変態だなこいつ。

俺が変態に変えてしまった。


そうして聖女は俺を乗せて走り続けた。


「はぁ、はぁ……」


倒れそうな聖女。


それでも俺のために歩き続ける。

素晴らしい乗り物だなこれは。


馬などやはり時代遅れの乗り物だ。

やがて目当ての場所まで俺を運んだ聖女。

だったが俺の目に入ったのは薬草ではなく、他のものだった。


「なっ……ファラン。何故貴様がここに!」


そう言ってくるのはエルザだった。

驚いた。何でこんなところにいるんだこいつ。


「というよりお前何に乗ってるんだ?!人じゃないかそれ?!」

「こいつが乗せてくれたんだよ?なぁ?」


そう聞いてみたけど疲れているのか聖女は何も話さない。


「ご、ごほぅびください。ご主人様」

「仕方ないな。俺をヒールしろ」

「ひ、ひーる」


俺をヒールしてくる聖女。

復活した俺は聖女にご褒美をくれてやった。


「うぐぅ……♡♡」

「おら!受け取れよご褒美!これが欲しかったんだろ?!」

「は、はひぃ……♡♡」


目がトロンとしてその場にうつ伏せに倒れる聖女。

聖女がいるからか知らないけどその様子をエルザは黙って見ていた。


俺は途中までしか下ろしていなかったズボンを脱いで蹴り捨てた。


アニメとかであるじゃん?服脱ぎ捨てるの、あれがやりたかった。

ズボン脱ぎ捨ててるやつ見たことないけど。


さぁ、それより決闘の時間だぜ?エルザ。


「な、何故脱いだ?分からんな」


そう聞いてくるエルザ。

銃身を見ようとしない。


ふふふ、それは命取りだぜ?


「これが今の俺の武器だからさ。俺はここから動かずにお前を倒してみせよう」


そう答える。

ぬめりと太陽子を反射して光るマグナムをエルザに見せつけながら手を添える。


マグナムを握ってない方の手は腰に添える。

これが俺の戦闘スタイルだ。


ピュン!

俺のマグナムから弾丸が飛び出る。


引き金の感度は3000倍。

少し触るだけで弾丸が飛び出るってわけさ。


エルザの頬を銃弾が掠めた。

余りの速度と硬度に彼女の頬から血がツーっと垂れて流れる。


反応が出来ていなかったな、早すぎて。


通り過ぎた銃弾は後ろの木を破壊して。

木が倒れる。


「なっ……」


それを見て驚くエルザ。


「何だ……今のは……こんな攻撃見たことない」

「硬化魔法と、速度上昇魔法の併用さ。それよりも今のは威嚇いかく射せ……威嚇射撃だ。この程度で驚くなよ?」


俺は飛び出た液体に硬化魔法と速度上昇魔法をかけただけだ。

それで元がただの液体でもあれだけの威力を出す。


水鉄砲や吐き出した唾なんかでももちろん出来るが。


「俺のデザートイーグルを舐めたな?お前」

「で、デザートイーグル?」


首を傾げるエルザ。

デザートイーグルを知らないらしいな。


そういえばこの世界銃なんてないもんな。


「知ってるか?俺のマグナムの装填数は12発。つまり後11発撃てるってことなんだよ。せいぜい踊りなよエルザ。しかもここは生き生きの森。フィールドは俺の味方さ。天は俺に味方してるようだぜ」


正直自分でも何言ってるか分からない。言ってみたかったこと無理矢理詰め込んだ。

その場のノリで喋ってるだけだ。


ピュン!

ピュン!


ドピュ!!

ビュルルル!!!


飛んでいく弾丸。

その何発かを避けるが俺のマグナムの前に手も足も出ないエルザ。


「くっ!卑怯な!遠距離攻撃とは!しかもふざけているくせに何だ、この威力は!」

「おいおい、逃げてばかりかよエルザ?こりゃ勝っちまいそうだな」


カチッ。

カチッ。


更に発砲しようとしたが出なくなった。

こんなところで萎えてんじゃねぇよお前。


使えねぇ息子だな、おい。


後ろを見て聖女に声をかける。


「おい、メスブタ。ヒールしろ」


這いながらやってきて俺にヒールをする聖女。

───リロード、完了。


更に乱射していく。

やがて


「がはっ!」


エルザに1発当たった。

後はもう動きの鈍くなったエルザに集中砲火するだけだ。


ピュン!ピュン!ピュン!ピュン!

水鉄砲のような情けない音から叩き出される高威力の弾丸達。


「ふふふ、口ほどにもないなエルザ。やはりお前は俺のビッグマグナムに勝てないようだな」


立てないヒルダを引きずりながらエルザに近づいて行く。


「く、くそう……こんなふざけたやつに!」

「俺はいつだって大真面目さ」


ヌメリと光を反射して光る立派なマグナムをエルザに見せつけてやる。


「どうだぁ?このヌメリと光る銃身素晴らしいだろ?イカすよなぁ?!」


それをアニメとか漫画とかみたいにエルザの口に突っ込んだ。

ガボッ!


「んん!!!!」

「おいおい銃身は硬ぇんだぜ?噛みちぎろうとしたって無駄さ」


硬化魔法を何重にもしてかけてある。

噛み砕けるわけが無い。


一通り口内をかき回してから銃身を抜き出す。

あー、この圧倒的に支配権を握っている感じ堪んねぇ。


マフィア達がこれやりたがる気持ち分かるわ〜。


「ゲームエンドだな」


立ち上がって銃口をエルザの額に向ける。


「命乞いでもしてくれよ。高ぶらせてくれよ俺を」


俺がそう言ってもエルザは、傍で幸せそうな顔をして倒れているヒルダに目を向けた。


「ひ、ヒルダ?め、目を覚ましてくれ」


こいつはヒルダが俺にヒールをしたのを見ていなかったのだろうか。

目を覚ましたところでお前の味方はいない。


「さぁ、じゃあメインディッシュ。そろそろ貰おうかな」


子を略奪しようか。エルザから。


楽しませてくれよエルザ。

セイレーンやヒルダみたいに泣き喚けよ。

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