第7話 いい報告と悪い報告と

ルゼルが途中でダウンしたもののヒルダは俺にヒールをかけ続けて寝かせてくれなかった。


「こ、これが欲しかったんです、ファラン。ずっと。このゴミムシの私にもっとください」


ずっと俺に跨ってる。

あの、そろそろ寝かせてくれませんか?


そう思って俺は一旦寝ていたのに朝起きてもまだこいつはやっていた。

そこに、ブイン!とまた誰かが瞬間移動してきた。


そこに立っていたのは魔王様だった。

魔王イキシア。

ロリっ子。


この部屋を見た瞬間驚いていた。


「うおっ!何だこの部屋は!」

「お子ちゃまが何の用だよ魔王様」


そろそろやめろと言ってヒルダを退かして立ち上がっても今度は掃除にやってくる。


もう放っておこう。

この変態ドスケベ聖女は。


「話していいのか分からんが話すぞ」


そう言ってイキシアが話し始めた。

イキシアが話し始めてもヒルダが音を出してうるさい。


「報告が二つある。いい報告と悪い報告があるが」

「とりあえずいい報告からで」


こんなこと言う人初めて見たな。

俺も自分が生きてる間にいい報告と悪い報告の両方を同時に聞くことになるとは思わなかった。


「ルゼルの四天王降格は今後しばらくは無しになった。全てお前の功績のお陰だ」


そう言ってくる魔王様。

彼女が言うにはルゼルを四天王入りしているのはそのひたむきさを買っているから、らしい。


「そこでファランにもダンジョン経営を1つくらいやらせたいのだが」

「まじで?」


面倒くさそうだなぁ。

ルゼルに任せていいかなぁ?


そんなことを思いながら後日話すと言われたので悪い報告に入れと言ったのだが、ここに来た時から魔王様の横にいた男がずいっと前に出てきた。


「悪い報告は僕から話そう」


そう言ってくるのは上品そうな服装をした貴族風の男。

名前はセオンと言うらしい。


「ところで貴様はいつまでその少女に掃除させるつもりだ?」


俺の足元にいるヒルダに指を指すセオン。


「俺もそろそろやめて欲しいんだが、こいつがずっとここにいるんだよ」

「ファランの……ファランの……」


そうやって呟きながら俺のことしか見ていないヒルダ。

だめだこりゃ。


「相手が人間と言え、流石にこれを無理やり長時間やらせるのは僕でもドン引きだ」


そう言ってくるセオン。

だからこいつが勝手にやってるんだって言っても聞く耳を持たない。


「許せん。女性たちにそんなことをさせるお前のことが。そしてイザベラに手を出したお前が」


ビシっと俺を指さしてくるセオン。

イザベラ?


あー、たしか、この前スキルを奪ってやった女だったな。

そんなことを思い出す。


「いい具合だったなあれは。生意気な女に無理やりぶち込むのは悪くなかったぜ」

「イザベラは僕の婚約者なのだ」


そう言いながらワナワナと手をふるわせるセオン。


「僕は貴様を許さない」

「それで?俺には伝家の宝刀ヤり捨て御免があるんだぜ?特権階級だぞ」


許さないと言われてもやっちまったもんは仕方がない。

俺はどうしたらいいんだ?


「魔王軍では君にダンジョン経営をさせる魔王様に不満の声も出ている。そこで僕は君に決闘を申し込みたい」


そう言って手紙を投げつけてくるセオン。

わざわざ持ってきたのだろうか。


中を開けてみると可愛い便箋が入ってた。封筒には確かに果たし状と書いてあったが。


何で果たし状にこの便箋をチョイスしたんだよこいつは。

中を見て朗読をなんとなく始めてみる。


「寝ようとしたら君のこと考えちゃったよ(笑)シオンチャンは、スタイルがいいネ、パンチュも可愛い(笑)(^з<)今から寝ようと思ってたのに、目が覚めちゃったよ(^_^)どうしてくれるんだ(^_^)」


シオンって誰だよ。

俺がそこまで読んだだけで場が凍った。


まだ2行目までしか読んでないのにこの破壊力はやばいだろ。


あと30行くらいあるのに。


「渡すもん間違えてるぞお前。まぁこれは預かっておこう」


中に書かれていたのはシオンとかいう奴への熱いラブレターだった。

何で俺がこいつのラブレターを読まなきゃならんのだ。


まぁ貰ったものだからアイテムポーチにしまっておく。

また今度イザベラにあった時にでも渡してやろう。


こいつ浮気してるよって。


「こいつきっしょ……」


魔王様もドン引きしていた。


「ま、待ってください!違うんです!魔王様!入れるものを間違えただけです!」

「書いたのがキショいと言ってるんだよ!私は!」


魔王様が俺の近くによってきた。


手紙がキショイ奴か聖女にマグナムの手入れをさせてるやべぇ奴か、この場にはヤバい奴とヤバい奴しかいないけど、かろうじて俺の方がマシと思えたらしい。


さすがの俺もドン引きだからな、あの手紙。


「ドン引きだわぁセオンくん」


俺はさっき言われた言葉をまんま返してやる。


「ほんとにドン引きするわ」


魔王も続くとセオンは顔面を真っ赤にさせてから新しい手紙を投げてきた。


「それが果たし状さ」


中身を開けてみると確かに今度は果たし状だった。

朗読を始めてみたが


「僕のイザベラに手を出すなんてヽ(`Д´)ノ許さんぞ!この僕は君に決闘を申し込む!(怒)」


マジできしょいんだけどこいつ。

この顔文字何なの?


まぁ果たし状なのは分かるんだけど。マジできしょいなコイツ。


「言いたいことは理解したよ」


キモイし要らないからこっちの手紙は投げ返す。

いらないよこんなキモイもん。


「気持ち悪いから二度と手紙を書くなお前は」

「な、なんだと?!僕が気持ち悪いだと?!」


怒鳴りつけてくるセオン。

お前のためを思って言ってんだよ、浮気野郎。


「どうでもいいけどさっさと出ていってくんないかな?この後ルゼルも起こしてやんないといけないし」

「その前にやることがある!」


そう言って俺達に近寄ってくるセオン。

見ていたのはヒルダだった。


ヒルダの右腕を掴んだ。


「きみ!やめていいんだよ?!こんな奴の言いなりにならなくて……がはぁっ!」


ヒルダがセオンの急所を杖で殴りつけていた。

クリティカルヒットしてる、痛そう……。


「邪魔しないでくださいよ。ファランは私のものです」

「ゴホォ……」


股間を抑えてその場にうずくまるセオンに容赦など知らないと言うように杖を振り下ろすヒルダ。


ガンガン、セオンを殴りつけていく。


「ゴハァっ!」

「私に触っていいのはファランだけです。私はファランのものです」


頭を杖でタコ殴りにされその場に死んだように伸びたセオン。


弱っ……こいつ。

聖女に殴り負けてるよ。


それを確認してヒルダがまたしゃがんで俺の体を触り始める。


「この味があの時から忘れられないんです……あとでキスもしてくださいファラン。ダメですか?」


すっかりド変態聖女になりやがってこいつ。

そんな従順になられたら俺もさすがに可愛がってやるよ?別に見た目嫌いじゃないしな?


これでも勇者パーティの中じゃ1番可愛かったしな?こいつ。

まぁ、ルゼルの方が可愛いけど?


1つ聞いてやることにした。


「お前は何に祈る?神に祈るか?」

「古き神は死にました。ですがここに立派なマグナム神がおられます。これこそが我々をお救い下さるのです」


すっかり神のことなど忘れたらしい。

俺のマグナムに釘付けだなこいつ。


次に魔王に目を向けた。


「そこの変態ラブレター連れてそろそろ帰ってもらってもいいか?」


この変態聖女の調教を今からすると言うと


「いや、これからファランに新たなダンジョンの経営を任せようと思っていたのだが、どうだろう?説明も兼ねてな」

「ふむ。そうだな、なら先にそっちを聞いておこう」


ダンジョン経営?

なんだかワクワクするものだ。

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