第4話 塵もいずれは積もるでしょう
「このダンジョンは捨てられません。どうにかしてここで食い止めないといけないのです」
ルゼルは俺の目を見てそう訴えかけてきた。
「どうして?」
「私は四天王の中でも最弱なのです」
四天王の中でも最弱って本当にあったんだ。
ていうかこの人で自分で言っちゃったよ。
そのセリフ、君が負けた時に他の四天王に言われるセリフだよね?
ふふふ、奴は四天王の中でも最弱って。
「ここを攻め落とされてしまっては確実に四天王は外されるでしょう」
そう言って俯くルゼル。
なんかヘビーな話になってきたな、おい。
「外されるだけならいいものです。きっと私は処刑されてしまいます。なので、ここは私が出てでも、止めに行かないといけないのです」
そう言って彼女は自分のレベルを表示した。
ルゼル
レベル25
あのー……四天王のくせにほんとに弱くない?この人。
どうやって四天王になったの?
チュートリアルの人、カイラでレベル50くらいあった気がするんだけど
ちなみにレベルが10も違えば基本的にはそれだけで低レベルが勝てなくなる。
カイラの半分くらいしかないよこの子。
モニターに映る冒険者達は中層をクリアしてラスボスの部屋まで来ていた。
ラスボスはミノタウロス。
レベルは20くらい。
あ、だめだこれ。
「あなたを連れてきたのは私の生きた証を誰かに覚えてて欲しかったからです」
そう言って涙を流しながら俺を見る彼女。
「私が存在したこと、覚えててください。最後まで一緒にいてくれてありがとうございました。さようなら」
ミノタウロスが撃破された。
その瞬間彼女はマスタールームの扉を開けて走って出ていってしまった。
モニターに目をやると涙をふき取ったルゼルが震える足で杖を構えて冒険者達の前に立っていた。
「さ、さぁ!相手してあげます!」
そう言ってる彼女を笑って見つめる冒険者達。
「おいおい!こいつ足震えてるぞ!」
見てられない。
俺に何ができるのか分からないけど俺もこの部屋を出て彼女の走っていった方向に走っていく。
「いやっ!」
吹き飛ばされてきたルゼルを受け止める。
「え、ファランさん?」
俺を見上げてくるルゼルに
「俺がやるよ」
そう言って前に出ると冒険者パーティと対面した。
女が1人に男が2人のパーティ。
女は出来れば残しておこう。後でスキルを使う。
「お前人間だよな?何でそっちにいるんだよ」
そう言ってくる冒険者の男2人に
「アイスランス」
呟いて即、氷のランスを投げた。
バタリ。
と倒れる男。
即死だろう。
顔面を撃ち抜いたから。
「え?な、何で?!」
女の冒険者達が駆け寄ろうとする中俺は次の魔法を使う。
「絶対零度」
カイラの魔法に関してはある程度効果を知っている。
絶対零度は場の空気を極限まで下げて相手の動きを鈍くする魔法。
「くっ……な、何これ……動けな……」
「アイスファング!」
次は手に突然現れた氷の牙を女の足に突き立てる。
地面に縫い付けて固定化。
「づぅ!!!な、何で!あなた人間でしょ?!ど、どうして!」
どうやら俺の話はまだ聞いていないらしい。
勇者パーティを裏切った人間がいるという噂を。
「誰も生かしては帰さない」
「や、やめてよ……」
逃げ出そうとする女の前で脱いだ。
「な、何でこの状況で脱いでんのよ!」
「俺のスキル発動条件だから、だ」
容赦はしない。
すごい間抜けなスキルだけどこうしないと発動しないんだよ。
【子を入手しました】
一連の儀式を終えると俺の右手にまた玉が握られていた。
「な、何よその玉……」
俺の右手に握られている玉を見つめる女の前で
「これは、お前の子だよ」
そう言って俺はまた飲み下す。
【経験値が溜まりました。レベルに変更はありません】
そこまで質のいいものではないらしくステータスに変更はない。
やはり、勇者パーティとか四天王とかの子は質がいいみたいでステータスに変動はみられるけど、こんなどこにでも居る冒険者の子じゃ特に変化はないらしい。
「もうお前に用はない。別に恨みは無いが死んでもらう」
そう言って氷の剣、アイスソードを抜いた。
「や、やめてよ……こ、殺す気なの?」
「言ったよな?生かして返すつもりは無い」
その時
「ブモォォォォォォォ!!!!!!!」
起き上がったのか自然湧きしたのかは分からないけどミノタウロスが女を叩き潰した。
俺のことは味方と認識しているようで襲ってくる様子はなかった。
全て終えた俺はルゼルの下に戻る。
「これでよかったか?」
そう聞くと
「ありがとうございます!!!!この事は忘れません!!!!」
そう言って飛びついてきた。
「ははは。気にするなよ」
そう言いながら俺はとりあえず先程出てきたマスタールームへと向かった。
マスタールームに入るとルゼルは被害状況の確認を始めた。
どのフロアにどれだけのモンスターが欠けているのか、とかを確認しながら必要な場所に必要なモンスターを配置していく。
ダンジョンマスターってのも大変らしいな。
俺には分かんねぇなぁ。
とりあえず強いモンスター配置してそいつらに倒させたらいいじゃーんって思うけどそういうものでもないらしい。
やる事もないし俺は瞬間移動魔法も使えないのでこのままルゼルがダンジョンマスターの仕事をするのを見るしかできない。
数時間くらい待っているとふぅ、と一息ついてルゼルが俺に近付いてきた。
「あ、あの、ご飯食べますか?私こう見えて料理できるんです」
そう言うので頼んでみたらなんかよく分からない上品な貴族が食べてそうな食事が出てきた。
俺がそれを食べているとルゼルが手を掴んできた。
「魔王様がされていた話ですけど。私なんかで良ければ使ってください」
とそう口にしてきた。
「え?」
「い、いいですよ。ファランさんなら。あなたの戦う姿に惚れてしまいました」
そう言って顔を赤らめると羽織っていたマントを脱ぎ始める。
「あー、俺まだ次できないよ?」
そう返してみる。
さっきやってきたところだし俺は。
「え?そ、そうなんですか?」
聞いてくるルゼル。
顔を赤くしていた。
知らなかったのか。
「ご、ごめんなさい。なんか私すごくエッチな子みたいですね……」
そう言いながらチラチラ俺を見てくるルゼル。
「き、キスくらいはしてもいいですか?」
「それくらいならいいけど」
まぁ別に俺の息子様の都合に関わらんからなぁそれは。
そう思って見ていたら、顔を近づけて来た。
「し、しちゃいました」
顔を赤らめてそう言ってくるルゼル。
「す、好きになってもいいですか?」
そんなことを聞いてくる。
「別にいいに決まってるじゃん?」
許可を取るような事でもないし。
人間裏切ってよかったー。
1番タイプの子が俺のこと好きになってくれたらしいし。
カイラさんありがとう!あなたのお陰で俺はとりあえず強くなれてるらしいです!
なんてことを思っていたら、さっきのキスがあったからか俺の息子が反応していた。
元気なようだ。
休憩用なのかこの部屋にはベッドも置いてあった。
ルゼルの両手を掴む。
「なぁ、ルゼル?やっぱりいい?」
「は、はい!勿論です!」
【四天王ルゼルの子を入手しました】
【獲得スキルなし。レベルアップなし】
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