第3話 四天王?やらせて
結局子は取り出せなかったまま朝を迎えた。
恐らく1人1回限りなのかな?
「おはようファラン」
「おはよう」
そんな挨拶をしてカイラは俺を魔王城の方まで連れていく。
にしてもこの人達も移動方法は歩きなんだな。
なんか漫画とかアニメとかゲームとかじゃ四天王ってテレポートとかしてるイメージあるんだけどな。
そのことを聞いてみる。
「できないことはないけど結局移動は徒歩の方が私は好きだなー」
そんなことを言うカイラ。
どうやらこの人の個人の趣味らしい。
そのまま歩き続けたら魔王城とやらに辿り着いた。
街を抜けてきたのだが俺が人間だから歩くとダークエルフ達を初めとした街の人達が変なものを見る目で見てきた。
まぁ、そりゃそうなるよな。
魔王城を歩きながら色々と説明してくれるカイラ。
「丁度人間が欲しかったところなんだよね。そういえば」
彼女が言うには今の人間と魔王軍との力関係はほぼ互角らしい。
そこで慎重に慎重を重ねたいということで人間側に送れるスパイを探していたらしい。
だがスパイだ。
生半可な人間ではダメ。
「私は思ったよ。ファランなら適任だって」
そうは言われてもなぁ。
なんて事を思っていたら魔王室まで案内してくれたカイラ。
「魔王様。四天王カイラただいま戻りました」
魔王の前で膝を着くカイラ。
その魔王は、と言うと銀髪のロリっ子だった。
「よくぞ戻ったなカイラ」
あのーこの人が本当に魔王なんですか?
俺が不思議そうな目で見ていると
「何を見ているのだ。お主は」
「いや、ほんとにこのちっこいのが魔王様なのかなって」
俺がそう言うと
「申し訳ございません魔王様」
と代わりに謝るカイラ。
その様子を見るとどうやらこれが本当に魔王様らしいけど。
「気にするなカイラ。私の見た目はたしかに、魔王には相応しくないだろう」
そう言って俺を舐めるように見てくる魔王様。
「名乗ろう。私はイキシア。魔王軍の頂点に立つ魔王だよ」
そう名乗ってくるので俺も適当に自己紹介する。
「なるほどな。能力についても理解した」
そう言うと魔王は四天王を呼び付けた。
「お呼びでしょうか?」
そんなような事を口にしてカイラ以外の四天王が魔王の前に畏まった。
すげぇな魔王様。
俺もお呼びでしょうかとか言われてみてぇな。
人をさ、口だけで使ってみたいわけよ。
お前、俺のマグナムの相手をしろ、とかさ。
他の女の子とイチャイチャしながら言いてぇよ。そんなことを。
魔王様は全員に俺のことを説明した。
「という訳だ。つまりこの男とつき合いなさい」
そう言われてカイラ以外の四天王は全員
「嫌です」
と拒否。
えぇ……?
そこで拒否するの?君たち。
おっきなおっぱい、ちっさなおっぱい入り交じっていて俺楽園に来たと思ったのにいきなり落とされたんだけど。
てかカイラはすんなりさせてくれたじゃん?!どうしてほかの人は拒否するの?!
あれなのか?カイラはゲームで言うチュートリアル的なあれなのか?だからチョロかったのか?
「そろそろ次の用事の時間だな。私はいつでも味方だよ。私の部屋教えておくからいつでも来ていいよ」
そう言ってカイラは部屋を出ていった。
マイペースな人だな。
なんて事を思いながら見送る。
さよなら、チュートリアルの人。
あなたの聖母のような優しさと気持ちよさを俺は忘れません。
それを糧に今日も進んでいきますよ。
それを見たのか四天王の内2人はどこかへ消えてしまった。
残ったのは1人。
とんがり帽子を被った黒髪の大人しそうな少女。
正直1番俺の好みの子だったんだけど。
「つまり、君は俺とデートしてくれるってこと?」
残ったのそういうことだと思って俺はその子にそう聞いてみたけど。
「い、いきなりすぎませんか?!」
戸惑うのを見て魔王イキシアが口を開いた。
「ルゼル?その男の能力はお前に教えた通り」
「で、でも私は、そういうのは好きな人とじゃないと。なんか流れでこの人でいいやってなってるカイラのようには」
そうやって言い返す彼女。
まぁ普通はそうだわな。
チュートリアルの人が聖母だっただけだよなぁ。
「まぁしばらく一緒にいてやってくれ。それから人間、お前には期待しているからある程度は好きにしていいぞ。特権を与える。勿論ルゼルを強引にやってもいい」
そう笑ってイキシアはどこかへ消えていった。
すげぇな魔王様は。
四天王もいきなり消えたけど、やっぱりそういうこと出来るんだね!魔王軍って!
てか丸投げしたよあの人!
俺どうしたらいいわけ?!
こんな可愛い子と2人残されてもどうしたらいいか分かんないよ!
教えてよチュートリアルの人!
なんか気まずい空気になったし俺はルゼルに話しかける。
「ね、ねぇ、ルゼルちゃんだったよね?」
「は、はい!そうです!」
「なんか四天王って色々仕事とかあるんでしょ?俺に手伝えるか分かんないけど、それ手伝うよ」
「い、いいんですか?」
そう聞いてくるルゼルに頷く。
まぁ正直もう戦闘能力的にはチュートリアルの人に攻撃魔法を貰ってヒルダから回復能力は奪い取ってきたから十分と言えば十分なんだが。
一応貰えそうなら貰う方向でいいか。
「で、では手を繋いでください。その瞬間移動するので」
そう言われて差し出された右手を握ると
「ひゃうっ!」
手を引っ込めて顔を真っ赤にしてしまう。
「ご、ごめんなさいぃ……男の人と手を繋ぐなんて初めてで」
そう言いつつも手を出してくるのでもう一度握ると彼女は俺を連れて瞬間移動してくれた。
想像していたような光はなくてずっと暗い空間にいた。
この瞬間移動もどうやら魔王軍仕様らしい。
そんなことを思っていたら目的地についたようで黒い場所から出てくることになったのだが。
「ここが、私に任された場所なのです」
そう言って彼女は俺にその場所を紹介してくれた。
【黒の塔】
そんな名前のダンジョンらしい。
「ここはダンジョンです。私はこのダンジョンの管理人を任されているのです」
そう呟く彼女。
その部屋にはモニターとか色々あって。その中の1枚に人間の冒険者が映り込んでいた。
「あの人達が攻めてくるのをどうにか守るのが私の役目なのです」
そう説明してくるルゼル。
しかし、モニターに映し出された戦況はこちらが不利と思われるようなそんな状況だった。
もう既に中層と言われる中間地点を冒険者達は攻略を始めている。
こちらの主力モンスターがレベル20とかなのに向こうの冒険者のレベルは30とかになっていた。
これ、勝てなくね?
このダンジョン捨てるしかなくね?
俺はそう言ってみるけど、首を横に振るだけだった。
「それは、できないのです」
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