第2話 穴があったら入れたい

とりあえず聖女の力を吸収した俺だったが。


「あーやべ、大変なことしちゃったよな」


あの時は頭に血が昇っていたとは言え正直やらかした感は否めない。

もう後戻りは出来ないだろうな。


そんな俺は村を出て魔王城に向かって歩いていたのだが。

だって今から人間ですって味方のフリしてもそのうち捕まるに決まってる。


ならもう魔王様ー助けてーくらいしかなさそうなもんだと思ったから、なんだが。


「ん?」


その道中で薄暗い沼地のエリアで血だらけで岩に寄りかかっている青髪の女の子を見かけた。


穴があれば入れろ。

それが俺のスキルの鉄則。


穴に入れて強くなるんだ!

そんなアホなスキル。


まだモンスター倒してレベリングしてるヤツらが哀れで仕方がない。

そう思いながら少女に近づく。


「死んでるのか?分かんないけど、とりあえず強くなるために入れてみるか。それより死体からも子って入手出来るんだろうか?」


我ながら自分で何を言っているのか自分でも理解できない。

女の子が血だらけで落ちててとりあえず強くなるために入れてみるか、なんてセリフ漫画でも見たことねぇよ。


まぁ、でも下手すれば全人類敵に回した俺としてはとりあえず入れてみて強くなってみるしかないわけで。

今の俺聖女の力しかなくて心許ないし。


「ハァ……ハァ……」


俺は子を手に入れた。


【四天王のカイラの子を手に入れました】


その表示を見て驚いた。

とりあえず先に子を食べよう。


ガリッ。


「マジかよ……四天王って」


子を噛み砕いて、飲み干す。


【四天王カイラの子を食べました。力を吸収します】


【アイスファング、絶対零度、コールドランス……などのスキルを獲得しました】


【レベルが上がりました。レベル35からレベル40】


お疲れ皆さん。

俺は穴に入れるだけで強くなれるんです。


いつもモンスターを倒してレベリングご苦労様です。


「何で四天王が血まみれで倒れてるのか知らないけどとりあえず助けてみるか。まだ脈打ってるし死んではいないでしょう」


俺は聖女のスキルを使う。


【聖女の祈りを発動します。対象を選択してください】

・ファラン

→カイラ


【カイラに聖女の祈りを使いました】


しばらく待っていると


「ん……あ……?」


パチリと瞳を開けた四天王のカイラ。


「目覚めたか」


そう言って俺は頷くと


「な、何故人間がここに?」


事情を説明した。


「という訳で、俺を丁重に保護しては貰えんでしょうか?」


そうやって聞いてみると


「助けられたのは事実だ。魔王様には話してみよう」


そう言って立ち上がった彼女の足がベチャリと。何かを踏んだ。


「何の音?」


下を見るとそこにはそこそこの量の白と赤が混じった液体。


「わ、私にも入れたのか?」

「大変申し訳ございません。力が欲しかったのです。強くなりたかったのです」


土下座する。前世でいっぱいしてきたから誰よりも早くできるよ。


こればかりは流石に謝っておく。

怒られるかな?と思ったけど


「顔を上げてくれ。そういう事情があるなら仕方がない。それよりも助けられたのは事実だ。責める気になれないよ」


そう言って俺に頭を上げさせるカイラ。

あのヒルダとかいうゴミのような聖女とは比べ物にはならない包容力。優しさ。


気絶してる間に無理やり入れたこんなゲス以下の汚物をお許しになられるなんて。素晴らしい人だ!


「神ですか?!あなたは!」

「か、神?」


戸惑うカイラ。

やがて俺に手を差し出してきた。


「改めて自己紹介しておく。私はカイラ。宜しくファラン」


俺はその手を取った。


「では、魔王城へ向かおうと思うのだが少し仕事を手伝ってくれないだろうか?」


それは仕方ないな。

俺魔王城までの道細かく知らないし。とりあえずカイラについて行ってみよう。


「ここは底なし沼の森と呼ばれてる。ちゃんと私に着いてきてくれ。底なし沼に引き込まれる可能性がある」


そんな怖い沼地エリアなのかよ。ここは。


「で、仕事ってのは?」

「この辺りで最近モンスターが暴れているらしくてな。それの鎮圧を任されている」


そう言ってどんどん進んでいくカイラ。

魔王軍ってのも暇じゃないらしい。


「ちなみにさっき気絶していたのは?」

「そのモンスターに返り討ちにされたから」


四天王を返り討ちにするってどんだけ強いモンスターなんだよ。


「魔王様から殺すなと言われていてね。命を奪うのなら簡単なのだが、加減が難しくて」


そうやって歩いていると辿り着いたのは少し拓けた場所だった。

沼はここで終わっており底なし沼に引き込まれることもなさそうだ。


そしてその場所にいたのはケルベロスだった。


三本の首を持った犬。


「はー、どうしようか」


カイラが悩んでいる。


「ワオォォォォォォォォォン!!!!!!」


吠えるケルベロス。

おーこわ。


どうやって鎮圧するんだよあれ。

いや、ちょっと待てよ俺ならいけるんじゃね?


今の俺は四天王と呼ばれるカイラよりは流石に弱いはずだし。

その俺が彼女の魔法を使えば、丁度いい感じに体力だけ削れるのでは?


「アイスランス」


俺は氷の槍を作り出すとそれをケルベロスに投げた。

グサリと刺さると氷の槍はケルベロスの全身を徐々に凍らせていく。


「グルルルルルル」


こっちを見てくるケルベロスだけど襲ってくるほどの元気は無いらしい。


そのまま足を引きずってケルベロスは森の中へと消えていった。

傷でも癒すのだろうか?


「鎮圧というのはこれでいいのか?」


カイラに聞いてみると


「あ、ありがとう!ファラン!君のおかげで仕事が終わったよ!」


と喜んでいるカイラ。

どうやら今のでよかったらしい。


「今の絶妙な力加減が私には難しかったんだ。とにかく助かったよ。この事も魔王様には伝えてみよう」


そう言って歩き始めるカイラの後を俺は追いかけることにした。


そして


「ふぅ……日が暮れてしまったな」


カイラと夜を明かすことになった。

流石に暗い中歩き回るのは魔王軍でも中々やらないことらしい。


「テント用意したよファラン」


そう言ってくれるカイラ。

食事も済ませた事だし中に入っていく。


あとは寝るだけかな?


中に入って横になっていると、カイラが後ろから俺に話しかけてきた。


「そ、そのしたいのか?」


そう聞いてくるカイラ。


「何で?」

「いや、それならさせてあげようかなって。さっきのお礼をあるし」


そうは言われてもまだ半日経ってないくらいなんだよな。

それに別に好き好んで何度も何度もやってる訳じゃない。


「子が欲しかったからしただけで別にそんな事ないよ。人を性欲の化け物みたいに思わないでくれ」


あーあー。面倒臭いなぁ俺のスキルは。

使うのにやらないといけないなんてさ。


そのうち擦り切れちまうよ。


「そ、そうなのか」


そう言われて考える。

でもここまで用意されて食わないのはなぁ?って感じ。


「まぁでも、させてくれるならさせてもらおうかなぁ?」


1度子を取り出した奴からももう一度子を取り出せるのか、そういうのも気になるし。

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