第40話 聖獣②
「あーら!あなたまで来たの?来たって何も変わらないのにぃ??」
「…くさっ。」
「…ムカつくわね、あんた。」
反女神がニヤニヤ笑う。しかし亜月はあまりの臭いに鼻を押さえて顔を背けた。
「そんなに臭いんですの?」
「…うん。すごく臭い。めちゃくちゃ臭い。今まで生きてきた中で一番臭い。鼻が曲がりそう。というか吐きそう。おえっ!」
「黙りなさいよぉ!あなた失礼よ!」
「反女神に失礼も何もないでしょ?うわ、くさっ!」
「っ!」
亜月の言葉に反女神が顔を真っ赤にして怒鳴る。今まで見たこともないまるで人間のような反女神の姿に、ミィは目を丸くする。
「あんたのこと!最初から気に入らなかったのよ!男に縋ってヘラヘラしてばっかじゃないの!だからあんな程度の低い男に騙されて殺されかけるのよ!はっ!聖獣が聞いて呆れるわ!」
「うぅ…くさっ。話さないで…。」
「人の話聞きなさいよ!!!!!」
まるで友達同士のようなやり取りを繰り返す亜月と反女神をミィは黙って見つめた。
「っ!くそ!あんたなんて嫌いよ!さっさと死ねばよかったのに!前の聖獣はすぐに死んだのに!どうしてあんたはすぐ死なないのよ!」
「…強いから?」
「生まれたばっかりの聖獣が私より強い訳がないでしょ!!!くそ!今度こそ本当に殺してやる!」
反女神が力を手に収束させてそれを亜月に放ってくる。
「アヅキ様!!!!」
ミィが急いで駆け寄ろうとするが、それよりも早く攻撃が亜月へと届いてしまった。大きな火柱が上がって亜月の体が飲み込まれる。
「あっはっは!やっぱり弱い!私に勝てるはずないのよね!聖獣がいなくなった女神なんて私の敵じゃないわ。すぐにあんたも殺してあげる!」
ミィを見てニヤリと笑う反女神。
「熱いじゃないですか!」
「ぎゃっ!」
反女神の頭に獣の姿の亜月がかぶりついた。
「ぎょあ!いだっ!いだい!いだいのよ!離しなさい!」
「うぅ、くさぁ…くさぃ…くさぁ。」
「なら離しなさいよ!!!!」
いくら怒鳴られても亜月は反女神から離れない。反女神の頭からダラダラと血が流れている。
「なんなのよ!くそ!あんたが近くにいると!昔の私に戻っちゃうのよ!やめて!近寄らないでって言ってるのよ!!!!」
「昔の…?」
ミィが反女神の言葉を繰り返す。
「嫌!嫌よ!昔の私なんて嫌なの!戻りたくない!小さくて弱くて!男に縋るしかなかった女神の自分になんて戻りたくないんだからぁ!!!!」
反女神は絶叫する。その体から禍々しい瘴気が溢れ出て反女神と亜月を包み込む。
「アヅキ様ぁ!!!」
伸ばされたミィの手は届かなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます