第31話 女神の正体①

「どうして、亜月があんな姿に!魔王に何かされたのか!」


「え?いやなにも。」


 剣を構えた御門がライヤードに向かって吠える。昔の亜月だったら心配してくれたことが嬉しかったかもしれないが、今は何も感じない。むしろ、『人間ごとき』が馴れ馴れしいとさえ思った。


「アヅキさん…あなたが魔王に操られているということは女神から聞きました。あの時はそれを知らずに追い出してしまって申し訳ありません。」


「今度は必ず助けてやるからな!」


「…。」


 聖女と勇者を名乗る2人が何かを喚いている。うるさいし気に入らない。何を勝手に自分の名前を呼んでいるのか。名前を呼ぶことを許可した覚えはない。


「…亜月、あの時は悪かった。サキラのことばかりでお前のことを考えられていなかった。お前がいつもサポートしてくれていたもんな。」


 御門の言葉に亜月の体がピクリと反応する。それを見て御門はニコリと笑った。


「いつも俺の世話をしてくれてありがとう。お前のおかげで俺は前の世界でも上手くやれていたんだな。お前の有り難さが離れてみて分かったんだ。だから戻ってこい。もうそんな悪魔たちと一緒にいる必要なんかない。必ず俺とサキラがお前の目を覚させてやる!」


「えぇ!私たちに任せてください!」







「うざっ。」






「え?」


「へ?きゃあ!!!」


 苛立つ。腹が立つ。何を自分の前でペラペラと話しているのだ。話すことも許可した覚えはない。自分に話すことを許されているのは女神と魔王とその仲間だけ。






「頭が高い。控えろ。」


「「ぐうっ!」」



 亜月の言葉がプレッシャーとなって御門とサキラの体にのしかかる。2人は地面に押し潰されて苦悶の声を上げている。


「2人とも!!私の勇者と聖女に何をする!この邪悪な獣め!」


 女神がこちらに手を翳して攻撃してくる。前は勇者たちの攻撃でお腹に穴が空いた。次はこちらの番だ。


「触れるな、穢らわしい。」


 ただその攻撃を跳ね返してやっただけだ。だがそれを予想もしていなかったのか、女神は何も反応できていない。そして、その腹に自分の攻撃を受けていた。



「がっはぁ!」


 体をくの字に曲げて苦悶する女神。



その姿は、なんとも。



「無様な姿…。」


「なんですっでぇーーー!」



 思わず口に出してしまったようで、女神が憤怒の表情でこちらを見てくる。

 どうしてだろう。以前はあんなに美しく綺麗だと思っていた女神だが、今ではただひたすらに醜い存在としか思えない。


「この悪魔め!私が必ず成敗してやる!勇者と聖女とともに!」



「っ!女神!大丈夫か!?」


「女神様!回復魔法をかけます!」


 やっとプレッシャーから抜け出した2人が女神のそばによる。それだけで2人も穢らわしい存在に思えてきた。

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