第32話 女神の正体②
「…汚いなぁ。」
「あ、亜月!?一体どうしたんだ?お前はそんな酷いことを言えるような性格してないだろ?やっぱり魔族に操られてれ!」
「うるさいなぁ。すっごくうるさい。うるさいし、汚い。何でそんなに汚いの?なんでそんなのがこびりついてるの?」
「亜月!」
「なんて酷いことを!」
御門とサキラが非難じみた声を上げる。
でも仕方ないのだ。
本当に汚くて臭くて近寄れない。御門とサキラの周りにヘドロのような茶色と緑が混ざった汚い靄がまとわりついているのだ。それはウゴウゴと蠢いていて、本当に気持ち悪い。気を張っていないと吐いてしまいそうなほど醜悪だった。
「アヅキ様?大丈夫ですか?」
それに気付いたミィが、亜月に駆け寄って背中をさすってくれる。亜月は背中をさするミィの手から温かい何かが体に流れ込んできて、気分が良くなるのを感じる。顔を上げてミィの顔を眺めるとにっこり笑ってくれた。
「瘴気にあてられたのですね。わたくしの聖の気をアヅキ様に注ぎましたので、気分が良くなられたのではありませんか?…まぁ、でもそれも一時的な処置にすぎませんが。あのように汚れきった者たちが近くに来れば聖獣であるアヅキ様は気持ちが悪いに決まってます。」
「そうなんですか?」
自分では何が何だか分からないので適当に返事をしておいた。
「アヅキ、大丈夫?気分が悪いなら先に城に帰っとくかい?」
そんなアヅキを見かねてライヤードが提案してくる。正直、その案はとてもありがたい。この場にいるだけで吐き気が止まらない。今すぐにでもこの場を離れたかった。
「ごめんなさい、私先に…。」
「行かせるはずないでしょう?」
「あ…。」
亜月の行手を阻んだのは聖女であるサキラだった。鋭い目つきで亜月のことを睨みつけている。
「女神と勇者と聖女を汚らしいとはなんたる屈辱。魔族にそのようなことを言われる筋合いはありません。むしろあなた方の方が醜い生き物であって…!」
「うぅ…気持ち悪い。」
サキラが話すたびに腐った生ゴミのような臭いが辺りに充満する。なんとか臭いを嗅がないようにしようとするが、どうしても呼吸のタイミングで吸い込んでしまう。
「おぇ…!」
ダメだった。臭い、臭すぎる。
俯いて何度もえづいているとサキラが「馬鹿にしているのですか!」と怒鳴りつけてくる。
「してない…うぅ…でも臭い。」
「臭いなど!わたくしは清潔でちゃんと毎日お風呂に!」
「そういう臭いではないのよ、聖女さん。この醜悪な臭いは、あの子からよ。」
ミィがある一点を指差す。
「…女神…さま?」
御門とサキラはポカンと口を開けて、己たちを導く女神を見つめたのだった。
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