第29話 666



「だから、私はお前達と戦うつもりはない。マシール。わかるか。今まであなたが説得した全ての魔物の魂が、私を説得してくれたのだ。あなたが魔物を説得していた全ての会話が、私達の経典きょうてんとして採用された。こんなに速く今日此処に来てくれてありがとう。私は神上がりする」


「それは許さん」


 その言葉を吐いたのは誰だ!


「私だ」


「えっ?! ユーリ?! その声誰なの?!」


「れん。私の声に覚えがないか?」


「お、お父さん?!」


「お前は今まで何匹もの魔物を倒した?」


「数え切れない程だ」


「教えてやろう! お前はレベル55になるまでに666匹もの魔物を倒した。わかるか。お前が私を倒せなかった訳が」


「どういう事だ?!」


「お前が倒した全ての魔物の魂が全部私に合体して強大な霊力を持つに至ったのだ!」


「!」


「だから説得率100%のマシールが、一匹も魔物を殺していない、此処に来た冒険者の中で一番レベルが低い彼女が一番強いのだ! わかるな?」


「そうだったのか」


「だから、私はお前達と戦うつもりはない。マシール。わかるか。今まであなたが説得した全ての魔物の魂が、私を説得してくれたのだ。あなたが魔物を説得していた全ての会話が、私達の経典として採用された。こんなに速く今日此処に来てくれてありがとう。私は神上がりする」


「それは許さん」


 その言葉を吐いたのは誰だ!


「私だ」


「えっ?! ユーリ?! その声誰なの?!」


「れん。私の声に覚えがないか?」


「お、お父さん?!」 


 そう、その声は正しく愛崎れんの父親、愛崎正守だった。ユーリの役をロールプレイしていたのは彼だった。正守の代役が、シイ=エリールだった。彼女はお見合いの時にお茶を運んできた女性。


第29話 了


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