第28話 カノッサの屈辱

 

 マシール達は、そのまま魔王の謁見えっけんの間に向かう。そこに辿り着くまでの戦闘は半端じゃなかった。だが、相当レベルが上がってるレオンとモッコの前では赤子同然だった。

 例の戦法でマシールの説得率は以前100%のままで177回まで伸びた。

 そして、終に魔王と対決する事になった。マシールこと愛崎れんがこのゲームにダイヴしてから5時間24分での快挙だった。

 このゲーム世界での悪の根源神、魔王は謁見の間で豪奢な椅子の肘掛けに頬杖をついて、退屈そうな顔を見せ、


「ほう。そちの顔は覚えてるぞ。で、何しに来た」


 と、興味なさげに言った。目は鉄仮面に覆われている。


「何しに来ただと?! 決まってる! お前を倒しに来た!」


 いきなり剣を構えるレオンを抑えて、モッコが言う。


「待て! 此処はマシール殿に任せよう!」


「はい!」と、マシールは皆に答えた。更に、「お姉さんを返して!」


「姉だと? お前は姉の正体を知らんのか!」


「正体?」


「それをわからせてやる。お前は説得率100%だそうだな」


「そうです!」


「レオンだったか。お前の名前は」


 今度は魔王はレオンに問いかける。


「お前は今まで何匹もの魔物を倒した?」


「数え切れない程だ」


「教えてやろう! お前はレベル55になるまでに666匹もの魔物を倒した。わかるか。お前が私を倒せなかった訳が」


「どういう事だ?!」


「お前が倒した全ての魔物の魂が全部私に合体して強大な霊力を持つに至ったのだ!」


「!」


「だから説得率100%のマシールが、一匹も魔物を殺していない、此処に来た冒険者の中で一番レベルが低い彼女が一番強いのだ! わかるな?」


「そうだったのか」


第28話 了

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