第16話 社会的評価を数値化する事の是非


陪審員ばいしんいん制度では、有罪か無罪かは多数決で決められますよね? 言わば、点数制です。でも、ちゃんと裁判官がいるでしょう?」


「なるほど」


「入試制度でもそうです。単なるペーパーテストで優劣を決めるのではなく、内申点制度があるじゃないですか」


「そうだな。じゃぁ、株価はどうだ。あれは利潤の追求のみの世界でしかないぞ」


「でも、ちゃんと社会への貢献度という点で、働いている人はプライドをもってやっていますよ。利潤の追求の反面、それを度外視した非営利的事業も行っています」


「でも、それは偽善とは呼ばれないか?」


「それはひねくれた考え方だと思います。人の心を信じなければ」


「なるほど、信じるか。いかにも宗教を学んでいる学生の言う言葉だな」


「そう思います」


 れんは、気恥ずかしそうにてへっと笑う。


「なら、本題に入ろう。最初に人間に株価をつける制度の是非を問い質したな。どう思う」


「社会的評価を数値化する事の是非と言う事ですね」


「そうだ」


「能力主義という合理的思考の現れだとは思いますけど……。教育では内申点は公開されないですよね」


「なるほどな。だけど株価は公開されているぞ」


「株価はあくまでも表向きの成績にしかすぎません」


「じゃぁ、裏の株価も存在するのか?」


「それが、信じる事で得られる代価ではないでしょうか」





「どういう意味だ?」


第16話 了

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