第15話 人間に株価という数字をつけるシステム



 れんと父親は部屋を出て応接間へと向かう。障子を開けると、そこには一人の青年が居住まいを正して座っていた。一人だけだ。れんは顔を見ないようにして、向かいに座る。


「れん。こちらは、現在の聖法将軍のご子息しそくであらせられる亜沙羅あさら人生君だ」


「よぉ! れん。いや、マシール!」


「えっ?!」


「俺の声に聞き覚えがないか?」


「って、どうして私のゲームでの名前を知っているんですか?!」


「俺だよ! 俺! ジョス=レオン!」


「レオンさん?!」


「そう!」


「何だ、お前達は知り合いなのか?」


 れんの父親は瞠目どうもくする。


「でもあなたの名前ってギザ=シルバザールさん、外人じゃないんですか?!」


「あれは仮名だよ」


「そうなんですか! じゃぁ、あなたが現在の聖法将軍のご子息なのですか?」


「ああ、まぁ、そういう事になるかな」


「お見合いの相手ってレオンさん?」


「見合いというか、どうしても本人に会いたくなってな」


「そうだったんですか……」



 そこにれんの父親が割って入る。

「二人が知己ちきの間柄なら何も言うまい。私は退散するから二人で話をしなさい」


 日本庭園。桂離宮のような見事な庭園の中を散歩する二人の交わす言葉を知ってか知らずか、池の錦鯉達が餌を求めて群れを作っていた。


「お前の株、千円アップしたぞ」


「はい」れんは少し自慢げに微笑んだ。


「なぁ、お前はどう思う?」


「何がですか」


「人間に株価という数字をつけるシステムの事だよ。お前も俺も聖法将軍の一族だ。宗教的見地から見てどう思う?」


「いい筈ないじゃないですか!」


「じゃぁ、どうしてお前はこのゲームをやっている」


「じゃぁ言います。教育的見地から見て、学力の指標となる偏差値制度をどう思います?」


「なるほど、そうきたか……」


「テストはどうです? 宗教が教育と一体化していた時代、どちらの見地から見ても人間の価値は、そう科挙でもそうです。テストで決められていたじゃないですか」


「まぁ、そうだな。だが、という事はお前は肯定派か?」


「そういう訳じゃありませんよ。こう考えてはどうでしょう。裁判は?」


「裁判?」


第15話 了

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