第3話 愛崎れん



 1000円の株価で1枚だったら、1円上がって1001円になった時は1円しか利益が出ない。大企業の株価が数百円単位でも、小口ではなく大口で1000株単位で購入などの場合が多い。

 休日の一時。缶ジュースを一口飲んで、画面を注視ちゅうしする。と、そこに。


「えっ! う、嘘でしょ?!」

 

 画面を見ると、れんの株価がうなぎ登りに上昇しているのだ。一気に、


「240円にまで上昇したの?」


 30円アップ! この短時間の間にだ。 


「たった今負けたばかりなのに!」


 れんの株を大量に買っている人達がいる?



「誰だ? あいつ」


「社長が引き抜いた、伝説のディーラーだとさ」


「へぇ……」

 

 西京証券取引所の場内を見渡せるボックスで、ある証券会社の社長と話をする男。

 そう、B・D-1こと、あの王 龍丹である。


「王君。今どうして名もなき女流プレイヤーの株を大量に買いあさるのかね?」


 眼鏡を掛け、温和おんわそうな顔をした所長に話しかけられた龍丹。


「ええ。あの株は将来大化けします。今の内に大量に買っておいた方がいい」


「ほう。名前は愛崎れんか」


「彼女は多くの同志を得て、きっとこのゲームを最初にクリアする女性になるでしょう」


「その理由は?」


 龍丹は、まずキャラクターの選び方を挙げた。数多くの種族の中から人間を選んだ事。


「それが何の関係が?」


「人間はオールマイティーの種族です。リーダーとして打ってつけです」


 RPGで人種を選ぶ時、人間は何にでも才能を発揮する万能型である。



第三話 了

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