第5幕

 夢の果て、もしくは宇宙の果てには宮殿が存在する。ほとんどの人間が知らなければ、訪れることもできない場所にランはいた。


 神々が奉納の舞を踊る先頭で、ランは演技を行う。脚本は、夢の世界を旅した男の話。その男を、ランは演じる。


 周りにいる奇妙な存在に対する恐怖はまるでなかった。


 咲良とその中に巣くっていた存在に対する復讐は成し遂げたし、それに何より、神様の前で踊りを行えるというのは――それがどのような神様であっても――光栄なことには違いないのだから。


 ともすれば奇怪にも聞こえるオーケストラの音色に合わせて演技を行うランの正面には、膨張を続ける宇宙を体現するかのような不定形の神が興が乗ったように体をうねらせる。


 隣で、少年が笑っていた。

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わが友への復讐のためのオペレッタ 藤原くう @erevestakiba

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