No.20「橙色」遠いところ、初恋、泣かない



毎年、旬の季節の訪れると思い出す。

寒い季節にふれ合った体温を思い出す。

耳元で囁きあった吐息の熱さを思い出す。

…あなたの涙で濡れた、服の冷たさを思い出す。


あなたはひだまりみたいだと笑っていたその顔を思い出せない。

私にとってはこれが初恋なんだと言ったその声を思い出せない。

どうして泣かないのかと問われたその答えを未だに思い出せない。


想い出だ。…橙色の果実が香る度に思い出すだけの、遠いところに置いてきぼりにした想い出。

ただ、どうしてか忘れ去ることができないでいる

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