第9話 ハッピーバースデー
「今日はワタシの命日なんだ」
「
咲恵は母の妹だった。
私からは叔母にあたる。
今日の集まりは咲恵の13回忌の法要だったのだ。
幼い頃、誰と遊んでいるのかと問われ、咲恵だよと言うと
母も咲恵も泣き出したことを思い出した。
でも、母の口から咲恵の存在を聞いたことがなかった。
「お母さんとは仲良くなかったの?」
不思議に思って尋ねてみた。
「優しい、いいお姉ちゃんだったよ」
咲恵が涙を流しながらも微笑んだ。
仲は悪くなかったんだ。
私が大人になったら話そうと思ってたのかな。
しかし、今の母の年齢から逆算しても、咲恵は少なくとも20代前半までに亡くなっていることになる。
若すぎる。
病気?事故?
どうして若くして死んでしまったの?と問おうと口を開いた時、
咲恵が見透かしたかのように先に言葉を発した。
「飛び降りたの。学校の屋上から」
あまりにも直接的な返事がきて驚いた。
そして衝撃がまた続く。
「透羽はワタシの生まれ変わりなの」
当時小学生だとは思えない程、私は咲恵からの話を落ち着いて聞いていた。
点と点がつながって線になった。
色々と腑に落ちたのだ。
元々生きた人間ではないことは物心がつくにつれ理解していたが、まさかここまで身近な存在だったとは。
咲恵の命日は私の誕生日。
誕生日が少し悲しい日になってしまった。
でも、なんだか少し心強い気がした。
ずっと一緒に過ごしてきたともだちとの繋がりの日でもあるから。
家に帰り、リビングに飾られている写真を眺めてみた。
「咲恵はこの中にいる?」
「これだよ」
どうやら、私が少女時代の母だと思い込んでいた写真の内の数枚は咲恵だったようだ。
「お母さんそっくり…」
「昔はよく間違われたわ。でもね、お姉ちゃんと透羽もそっくりよ」
泣きはらした赤い目でふふっと咲恵が笑う。
その日の夜、ベッドに横になりながら考えていた。
生まれ変わりとは言え、私が咲恵と会話ができているということは咲恵は成仏できていない。
十数年もこの世界に残っているということは、何か未練があるのだろうか。
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