第2話 色褪せないで



週が明けて月曜日。


学校へ向かおうと玄関のドアを開けると、

ちょうど同じタイミングでお隣のドアも開いた。


「あ…」


制服姿の冴木さんだった。

どうやらあたしと同じ高校に通うらしい。


「じゃあ、またあとで」

なんて言って別れることもできず、

冴木さんと学校まで一緒に向かうことになった。






「あははははっ」


学校につくまでの間、全く話が尽きなかった。

そして何よりも話が合う。

一昨日はじめて会ったということが嘘のように、2人で笑い合っていた。


冴木さんのちょっとした天然エピソードも面白いし、

かと思えばすごく聞き上手でもあるし、

一緒に話していてとても楽しかった。




冴木さんを職員室まで送り届けると、

別れ際に「未波ちゃん」と呼び止められた。


あ、名前呼びだ、と少しうれしくなる。


「ありがとう、またあとでね」


そう言って手をひらひらと振る姿はとてもかわいらしかった。


さっきの会話の中で、透羽とわちゃんが転校してくるのは

あたしのクラスだということがわかった。


透羽ちゃんさえよければ、あとで学校案内もしよう。

そんなことを考えながら教室へと向かう。



「未波!おはよう~!」

朝から元気な声と共に、背中に衝撃が走る。

クラスでも一番背が低く、妹キャラのような真由だ。


「もう、真由~」

と言いながら、ほぼおんぶの状態でぐるぐると回って見せた。


「ねね、未波。さっきの美少女だれ?」


先ほど透羽ちゃんと登校してきていたのを目撃したらしい。


「うちのクラスの転校生らしいよ。隣の家に引っ越してきたの」



転校生、というワードを聞きつけた数人がわらわらと集まってくる。

「どんな子?」「どこから来た子?」「男?女?」

質問攻撃に遭うが、適当に軽く答えて自分の席へと着いた。



ふと、自分の席の横に机が増えていることに気が付いた。

あたしの席は教室の窓側の一番端で一番後ろ。


クラスの人数が奇数だったため、隣には誰もいなかったのだが、

今日机が増えているということは、

おそらくここが透羽ちゃんの席になるのだろう。



そんなことを思っていると、チャイムが鳴り、担任が教室へと入ってきた。

「はーい、おはようございます。今日は転校生を紹介します!入ってきて~」

がやがやと騒がしくなる教室から、先生がドアの外に向かって呼びかける。


ふわっとした風と共に、少女漫画のように花びらが舞う演出が見えた。

本当にこんなことってあるんだ。


透羽ちゃんのかすかな足音が聞こえるくらいに、一瞬教室が静まり返った。

クラスのみんなが息を呑んで彼女に視線を向けていた。


冴木透羽さえきとわです」


先日、あたしとはじめて会った時と変わらない笑顔だった。

























今思えば、透羽がこの地に来たのも、この学校に来たのも、

全部意味があることだったんだ。


今更こんなことを言ったって、

この頃にはもう、戻れない。

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