第25話 レニアーリス姫の華麗なる奴隷生活④
「…本当にわらわを殺す気かあの女。」
レニアーリスは鳥籠の中で大の字になって天井を眺めていた。食事が運ばれなくなって5日目。いくら少食といえどももう腹が減りすぎて一歩も動くことができない。世話係の女は三日目の夜からこの部屋にやってきてもいない。
「あの女、絶対に許さん。」
恨み言を言ってみるも、やはり腹が減って長くは続かない。本当にこのまま餓死してしまうんだろう。
「スープ…スープ…スープが飲みたい…スープが飲みたい。」
レニアーリスは気が狂ったようにブツブツと呟く。今はもうスープのことしか考えられない。
コンコン。
そんな時部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。予想もしていなかったレニアーリスは言葉に詰まって返事ができない。すると、扉がガチャリと開く。
「あのぉー、さっきからスープスープって聞こえたので持ってきたんですけどぉ。」
「っあ!」
ひょっこりと顔を覗かせたのは、バサバサの黒い髪に細い目をした男の子だった。頭には小さなコック帽を乗せている。
「っえ!だ、大丈夫ですか!?」
キョロキョロと部屋の中を覗っていた少年は鳥籠の中で倒れ込んでいるレニアーリスを見つけると、血相を変えて駆け寄ってきた。
「体もこんなに汚れて!さてはあの女、なんの世話もしてないな!」
くそっ!と悪態をついた少年は、立ち上がって部屋から飛び出していく。レニアーリスはその後ろ姿をただぼんやりとと見つめていた。
「起きて、起きてください。」
ゆさゆさと体を揺らされる感覚。だんどんと意識が覚醒してくる。レニアーリスがゆっくりと目を開けると、目の前に先ほどの少年がいた。
「良かった。目を覚ましたんですね。さぁ、これを飲んでください。」
「っあ!!!!」
少年が差し出してくれたのは、死ぬほど焦がれていたスープだった。ホカホカと湯気が立っていて温かそう。そしていい匂いが部屋中に広がる。少年の手からスープが入った器を奪い取ると、レニアーリスは凄い勢いででスープを飲む。
「ゴホッ!!!」
「あぁ、熱いのにそんなに一気に飲むからですよ。ゆっくり飲んでください。まだおかわりもありますから。」
少年が笑ってレニアーリスの背中をさすってくれた。そして、汚れた口元を拭ってくれる。
「数日何も食べてないんですよね?まずはスープで体を温めましょう。少ししたら半お腹に入れましょうね。」
少年がレニアーリスの頭をよしよしと撫でる。いつものレニアーリスなら「下賤な男がわらわに触るな」と跳ね除けるが、疲れ切ったレニアーリスはただそれを受け入れた。
(気持ちいい。)
自分の頭を撫でる少年の手が心地よい。まるで体がふわふわと浮かんでいるようで、レニアーリスはもっととねだるように少年の手に頭を押し付ける。
「ふわぁ、やっぱり綺麗だなぁ。」
そんな様子を間近で見た少年は顔を真っ赤にしながら、レニアーリスの頭を撫で続けたのだった。
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