第5話
母さんが如月たちを送り出して事なきを得たがこの状況はどうしたらいいのだろう。
「んじゃどうして帰ってきたのか教えてくれる?」
色々言われるかと思ったがそんなことはなかったみたいだ。
もしかしたらほんとに救世主かもしれない。
「神楽と別れてあの家にいるのが気まずかったから帰ってきた」
「じゃあ私があんたたちのために買った家はどうなってるのかしら?あの家は私がしっかり契約書書いて買った家で所有権はあんたにあるのよ。神楽ちゃんと別れたから、あの家あげるとかどうせ言ったんでしょ?」
「おっしゃる通りです」
母さんには何でもお見通しのようだ。
「所有権を神楽ちゃんに受け渡すなら契約書を書き直さないといけないから、あんたと神楽ちゃんは必然的に会わないといけないわ。でも嫌なんでしょ?」
「はい」
「この時間帯に帰ってきたってことは話さずに一方的に突っぱねて逃げてきたんでしょ?大学のことだってあるし、もしかしたらあんたの勘違いとかもあるんじゃないの?私は一回向こうに戻ってしっかり話して今後をどうするかをしっかり決めるべきだと思うわ」
母さんの言葉には妙に説得力があって、自分のミスに何度も気付かされることがあった。
今日だってそう。
神楽の話を聞かずに一方的に突っぱねたのは俺。
自分が勘違いしてる可能性も考えずに逃げてきたのも俺。
間違っても3日前までは大好きだった彼女のはず。
もう好きじゃなかったのは俺なんじゃないのか?
そんな考えが頭の中で渦巻いている。
自分の膝に一つの雫が溢れる。
昨日の夜にだって出なかった涙で膝が濡れていく。
「なにしてんだろうなぁ俺…なんで泣いてんだろう…情けねえよ」
母さんが「はぁ」とため息を吐く。
「久しぶりにあんたにお昼ごはんを作ってあげるから、考えがまとまったらご飯食べて一度話し合ってきなさい。そうしないと誰も幸せになれないわ」
そんな母さんの言葉に今まで我慢していた嗚咽を漏らして泣いた。
まるで小学生のように。
「特に藍那ちゃんがね」
そんな母さんのつぶやきが俺に聞こえることはなかった。
◇◇◇
「行ってきます」
母さんにそう言って、昔大きくなったら乗れと言われた父さんのバイクに乗る。
金持ちと言われるおれの家系だからか父さんからもらったバイクは高そうで乗るのにためらってしまう。
「そんなところで立ち止まってないでさっさと行きな!時間は待ってくれないんだから。しっかり話しつけてきて私に報告しなさい、少しくらいなら私にだって手伝えることはあるから」
ホント母さんには助けられてばっかりだな。
今は仕事に行っててここには居ない父さんに感謝を告げてバイクに跨る。
「それじゃあ、行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい」
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今回の話は結構気合い入れて書きました。
皆さんから評価いただけると嬉しいです。
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