第42話 重曹じゃ消せない

なんでこんなメッセージが届くのだろう。

キララには見えているのか。この世界のことが。


「どうしたの?」

「いや、別に」

「何かあったって、顔に書いてあるよ」


顔に書いてある。


なんて書いてあるのだ? 

なんとビックリマークが書かれていた。それも2つも‼️。

‼️って、こんなのが顔に、それも赤く2本も書かれていたら、彼女だって異変に気付くよな。


「LINE? 誰から来たの?」


彼女はLINEってわかってる。それも‼️のせいだ。こんな物が顔に書かれているから、探りを入れられるのだ。消してやる。シンナーぶっかけて消してやる。顔がただれてもいい。いや良くない。


俺は迷った末に、

「キララから。キララ異世界に行ってるから」と正直に答えた。


今度は彼女の顔にビックリマークとハテナマークが浮かんだ。⁉️。やべ、さっきまで俺もこんな顔してたのか。


顔に⁉️。


人の顔だからシンナーぶっかけられないし。除光液で丁寧に消すか。って、俺ネイルしてねえわ。除光液なんかないわ。除光液でも肌荒れるわ。


「それ本当にキララからなの?」

「うん、キララのアカウントから来てるし」

「ちょっと見てみる」

与田れだよさん、いや、真中名香那眞さんは、そう言って紺ブレの制服のポケットからスマホを出して、見始めた。


「LINEの友達から姫来が消えてる」

そう言うと、また顔に大きな❓が書いてあった。

今度は❓を消したいな。何なら消せるんだ。重曹か。重曹しかないな。


俺が重曹をシンクの下の扉から出そうとした時に、

「姫来から来たLINE見てもいい?」

また顔に❓が書かれている。でもこの❓は強制的な❓だ。断らせない❓だ。


「でもプライベートなことだし」

その途端に彼女の顔の❓が❓❓になった。

なんだか❓❓が二つ並ぶと、それだけで顔みたいだ。眉毛と、下の点が目で。


❓❓。


「お願いだから」

「でもショックを受けるかも」

「どうして? そんなラブリーなメッセージ交わしてるの?」

「いや、そうじゃなくて」

だって真中名さんともう逢わないでって書いてあるし。自分の友達にそんなこと書かれたら嫌じゃね?


「大丈夫。何が、書かれてても傷つかないから」

「わかった」

俺は異世界に飛んでからのキララからのLINEのメッセージを見せた。


彼女は一つ一つを真剣に時間をかけて見ていた。

その間に戦争が2つ終わるほどだった。世界が少し平和になった。War is over.If you want it.


そしてすべてのメッセージを見終わった後、猿に似てるさ、さんは、違う、すでに懐かしいな、この回文。だから与田れだよさんでもなく、真中名香那眞さんは言った。言ったというより、断言した。


『これ、姫来じゃないよ』


彼女の顔には💢が書かれていた。

これは重曹じゃ消せないな。






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