第39話 都市伝説な死に方
遅い夕飯でも食べようとキッチンに行くと、母が倒れていた。部屋着のスカートがまくれ、下着も着けずに、尻が丸出しだった。
母は武郎の死で、ここまで情緒がおかしくなったのか。自分の母親がSiri丸出しだぞ。Siriじゃねえよ、尻だよ。
「おい、何やってんだよ。恥ずかしいだろ、息子にこんな姿見せて。サンバか。半裸でサンバか。それねらせめて上半身にしろよ、なんでケツ丸出しなんだよ」
俺は母を起こそうと、持ち上げて一旦仰向けにした。
すると母は驚愕の表情を浮かべていた。箱の中身はなんだろな、で、手を入れたらいきなりコブラに噛まれたような、こんなとこにコブラ入れんなよ、みたいに、目を大きく見開き、口も何かを咥えられるくらいの大きさに開けていた。
死んでいるのか?
下半身丸出しで。
丸出しで特出しだぞ。
呼吸音はしないし、肩も上下に動いてない。
俺はてのひらを母の口に当てた。母の何かを咥えられるくらいに開けた口、それが武郎のアレのサイズでないことを祈りながら。
でも俺のてのひらに、母の息はかからなかった。
死んでるのかよ、おい。
俺は見たくはなかったが、母の股間の方に目をやった。そこには電球らしき物のソケットが割れ目から突き出ていた。
母は電球をアソコに入れたのか!
そこまで、おかしな情緒になっていたのか!
武郎が家に寄り付かなかなって、結局は死んで、人肌が恋しくなったのか。電球に人肌の温もりなんてないぞ。
これは都市伝説によくある奴だ。
隣の学校の女子が遊び半分で電球をアソコに入れたら、それが中で破裂してガラスが飛び散って、ショックでその子は亡くなってしまったとか。
日本全国、どこにでもあるエロい都市伝説だ。
でも自分の母親がそんなエロい都市伝説みたいに、アソコに電球突っ込んで亡くなるなんて、おかしいだろうよ、なあ、正恵さんよおっ! そんの奴いないから、都市伝説なんだろうがよぉっ! 実際にいたら伝説じゃんかよぉっ! そして伝説へ、じゃねえよ!
こんなの世間様に顔向け出来ねえし。警察だって調べるだろうよ、正恵さんの正恵さんを、奥の奥までよぉっ!
ダメだ、俺まで情緒がおかしくなってきた。
頬に涙まで伝ってるし。
俺はテーブルの背に掛かっていた母のギンガムチェックのストールを手に取り、下半身にかぶせてあげた。
母さん。せめて安らかに天国に召されて欲しい
。アソコに電球突っ込まれた姿じゃなくて、幼稚園の頃に一緒に手をつないで歩いてくれた時のような、優しい母親の姿で。
俺はスマホで警察に連絡した。
女の人の声が言った。
「事件ですか? 事故ですか?」
「事故です。俺にとっては事件ですが」
俺なりに良い返しだと思った。
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