第29話 初ヒット

その晩、キララからLINEが来た。

『明日の朝、決行するの。死の森にある死のダンジョンに住む死の魔人を退治しに』


やっぱり行くんだ。そんなに死がついたとこに。死のリーグだな。勝てんのか。


『勝算はあるの?』

『猿橋がLvアップしたし、魔法使いのマチルダもユリナとの連係プレイが上手くなったし。やっぱりビチビチさんにしなくて良かった』


『ビチビチさん何か言ってた?』

『ビチビチ文句言ってた。ビチビチビチビチビチビチビチビチねちっこく。そんな人だと思わなかったけど』


まあビチビチ言うわな。


『そっか、そっちも大変だな。こっちもエルフを紹介されて、バディ組まされたんだ』

『エルフって、あの耳のとがった?』 

『うん』

『見るからに品性下劣な、口の端からよだれを垂らしながら性的な目で女を見るような?』

『いや、女のエルフだから』

『えー、いるんだ。女のエルフって。こっちには、はげ頭で体中が緑色で、なのに服も着ないでまっぱで、いつも勃起してるようなエルフしかいないよ』


場所によって、エルフの差でかいな。


『こっちのエルフはフツーっぽい。魔法使えて耳がとがって不老不死くらいで』

『でもエルフに心を許したらダメだよ。女だからってエルフはエルフなんだから。まっぱで勃起して」


そのイメージよっぽど強いな。


『そうだね。気をつけるよ』

『そのエルフはかわいいの?』

『うーん、見る人によるんじゃないかな』

なぜか嘘をついた。美少女系のアニメ顔してるのに。

『好きになったらダメだよ。利用され尽くして殺されるよ。向こうは不老不死で、時間の流れが人とは違うから、リズムもほんの一瞬すれ違うだけの他人でしかないの』


好きになったらって。

嫉妬してるのか。初嫉妬だ。初ヒットみたいな響きだけど。


『好きになることはないよ』

『私のこと今でも好き?』

『うん、好きだよ』

『じゃあそのエルフを使ってでも逢いに来て。転移でも転生でもなんでもいいから』

『わかった。いつか必ず逢いに行くから。明日は気をつけて頑張ってきてな』

『うん、わかった』

『俺のあげたダッフィー 、まだリュックに付けてる?』

『うん、つけてるよ。私の守り神だから』

『ありがと』

『うん、じゃあまたね』

『うん、またね』


あのダッフィー 守り神の役目してるんだ。

明日も守ってやってくれよ。俺の代わりに。

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