第51話 力の欠片②
「アホか!」
【ほう。あの娘を殺すのは、そんなに嫌か?】
「当たり前だろ!」
【しかし、そうなると、お主は与えられた使命を果たせず。結果、煉獄へ逆戻りだな】
そう言ってレヴァはクックックッと声を高めて笑う。
けど、怯むかよ。
「そんなんで俺を脅せると思ったら大間違いだぜ!
大体、リアムを殺すだけでも無理だってのに、その上『喰え』だぁ!?
もう一回言うぞ! アホか!」
【なら、やはり煉獄行き確定か?】
「あのなあレヴァ。お前、人肉喰った奴が人に惜しまれて死ねるとでも思ってんのか?」
【チッ! そこに気付いたか……】
「ったりまえだろうが! 他にも方法は有るんだろ? さっさと白状しろよ」
【そんなモノは無い】
「嘘
【ほう、断言と来たか。だが何故そう思う?】
「どうせ、お前の狙いは俺を人外にするか、自暴自棄にしてお前に取り込むってとこだろ?
大体、お前が言う通り、あの『声』が間違い無く『天使という存在』ってんなら、そんな矛盾めいた事に成る訳無いだろうが!」
【なんと、お主……。馬鹿では無かったのか】
「ちょっと話し合うか。コラ!」
久々の“禁!”の声と共にレヴァの悲鳴が俺の脳内に響き渡る。
あ~、
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝、メリッサちゃんに叩き起こされた。
客だって?
レヴァの野郎が苦しむ割に粘りやがって、口を割らせるのに時間が掛かっちまった。
お陰で寝不足なんだよ。
「もう少し、寝かせてくれないかなぁ?」
「ダメなのです。町長さんからです。何か急ぎだそうです。
お使いの人も焦ってますです! 起きるのです。リョーヘイ!」
やっぱりメリッサちゃんには弱い。
しぶしぶとだけどベッドから這い出して身支度を調える。
メシもろくすっぽ食わしてもらえずに、昨日と同じに町長の家に向かった。
「何が起きてんの、これ?」
町長の家の前は凄い数の人でごった返している。
おっさんが多いけど、女の人や若いお兄さんもいる。
後、子どももちらほら。
誰もが中に入りたがってるんだけど、何やら『緊急事態』とかで、門の前で誰もが突っ立ってるだけだ。
人混みをかき分けて、町長の家に入った。
「はぁ!」
話を聞いて驚いたのは俺だけじゃない。
リアムもローラも口を開けたまま、固まっちまった。
メリッサちゃんだけがキョトンとしてる。
「と云う訳で、魔術師殿にはこの町に残って頂く訳にはいきませんでしょうか?」
町長の話はこうだ。
この町を守る義務のある筈のカサンカ家が、防衛義務を放棄したらしい。
兵力不足でここまで手が回らないってのが理由らしいけど、そんな無茶が通るのかよ?
と思ってたら、そこも町長が説明してくれる。
「税は免除されますので、自力で兵を集めて防衛に回れとのことです」
「今まで集めてた税ってのは、いざって時の為のモノじゃなかったのかよ?」
「私もそう言ったんですが、まあ、無理なものは無理だ、で押し切られてしまいまして……」
「ホント、無茶苦茶ね」
ローラが呆れると同時に、リアムが俺も気にしていた事を口にする。
「町ごと侯爵に寝返ったら、カサンカ家はどうするつもりなんでしょうね?」
「まさか、そんな事を口にする訳にもいきませんので、そこは黙ってましたが……」
町長はそう言って溜息を吐くが、その言葉は、嫌な予想を生み出した。
こりゃ、話して置く必要がある。
どうもこの町長、暢気すぎるよ。
「狙いは、それかも、な」
「えっ! 魔術師殿。それはどう云う意味でしょうか?」
「町長さん。あんた暢気すぎるよ。
こうなったら実際に無条件開城しても誰に責められる訳もない。
町長さんだって最後はそうしても良いかなって思ってるんじゃないの?」
「はあ、実は……」
「迷う理由は?」
「まあ、侯爵は反乱を起こして兵力が必要な訳ですから、先日の様な事態になる可能性も有るのではないか、と」
「あれっ? 町長さん、あんた一昨日の事が『竜甲兵造り』に絡んでるって気付いてたのか?」
「はい、あれはちょっとおかしな山賊でしたので、考えました処、それにしか思い至らなく。
後、大きな声では言えませんが、あの山賊の中に、見たことのある顔があったようにも思えてきまして……」
どもる町長に、じれたローラが先をうながす。
「もう! はっきり言っちゃっても良いと思いますけど?」
「いや、ローラちゃん。私の立場でうかつな事は言えないんだよ」
そこまで分かってるなら遠慮は要らない。俺は町長を無視して言い切った。
「要は“一昨日のアレは男爵家の兵隊じゃないのか?”って疑ってるんでしょ?
なら、大当たりですよ」
その言葉に、町長は目をつぶって激しく首を横に振る。
あっちゃっ~! ダメだこの人。
現実逃避しちゃってるよ。
めんどくさいなぁ。もう、逃げちゃおうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます