第50話 力の欠片①
「うう……。酷い目に会った……」
ベッドの上で唸る俺をリアムが看病したがったけど、三人でお風呂に入るように言って、後は俺ひとりにしてもらった。
よりにもよってメリッサちゃんに「アレ」を鷲掴みにされて引っ張られるとは……。
タオルごしだろうが何だろうが、痛いものは痛い!
ってか、痛いってより“苦しい”
あの痛みは女の子には分からんだろうなぁ。
リアムの言葉に乗せられてホイホイとアホなことをした罰だと思うしかないか……。
まあ、少しだけど良い物も見れたし、それで良しとしようかなぁ。
下の方から“キャッキャッ”っとメリッサちゃんが騒ぐ声が聞こえる。
楽しんでいるようで何よりだ。
あの険悪な空気が続いたんじゃ、たまったモノじゃない。
全く、あのふたり、少しは仲良くしてくれよなぁ。
そんな事を考えつつ、ボーっとしていると、ふと気になる事が出てきた。
「なあレヴァ、起きてるか?」
【うむ、何だ?】
いや、ずっと静かだったから、寝てるのかな、と。
【あの様な騒ぎに参加したいとも思わんからな】
言うなよ……。
【で、何用ぞ】
あのさ、ここに来る前に、新しい『欠片』が手に入りそうだ、って言ってたよな。
【うむ、あのことか】
まだ、話せないか?
【いや。お主、先にあの小僧の配下を追い払った際に、少しばかりだが“殺し”の意志が見えた。
なら、話しても良かろう】
“殺し”という言葉に嫌な予感がしたけど、そのまま話を続ける。
けど、レヴァの話の中身は、とても納得できるものじゃなかった。
【今、身近に感じる欠片は『力の欠片』だな】
「力? って言うと、怪力とか?」
【うむ。また、力が上がると云う事は、同時に速度も上がることを意味する】
へ~、そんなものか?
何だか、スピードと力は対抗する能力みたいに感じちゃうけどね。
【何を言っておる。力無しに速度が上がる訳があるまい】
成る程、言われてみればそうだ。
貧弱なエンジンの音速戦闘機、なんて聞いた事も無い。
スマートな装いは、あくまでスタイルであって、速度に馬力が必要なのは当然だ。
うん、それは分かった。とにかく一挙両得の力って訳だな。
「で、どこにあるんだ?」
気が
でも、返事の意味が分からない。
【あの娘の中だな】
は?
【聞こえぬのか? あの娘が持っておる】
あの娘って、もしかして……。
【うむ、あのリアムと云う娘よな】
リアムが『欠片』を持ってるだって?
いや、それおかしいだろ?
そんな相手に俺が勝てるはずが無いじゃないか!
【持っている事は確かだ。
だが、本来の持ち主ではない為か、まるで使われた気配も無い。
つまり自分が『欠片』を持っている事にも気付いていない、という事だな】
なるほどね……。
けどさ、レヴァ、欠片をリアムから俺に移すにはどうすれば良いんだ。
この質問の返事は、実は薄々だけど感づいてる。
そして、答は“やっぱり”だった。
レヴァの野郎、事も無げに言いやがった
【殺して“喰え”】ってね。
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