第6話 炎の欠片②
しばらく呆けていた。
いやいや、いやいや、確かに夜が来るたびに火が欲しいと思ってた。
ここに来た最初の日には、ゲームのように『ファイヤー』なんて呪文も唱えてた。
まるで効果は無くて、ひとりで顔を真っ赤にして
けど、やっと力が現れたと思ったら、これは違うだろ。
確かに狼をやっつけたいと思った。
だからといって、地面ごと消し去ってどうする。
いや待て! やっぱり、これは凄い力じゃないのか?!
最初に求めてた『ファイヤー』そのものじゃないのか!
これならもう怖い物なんか無い!
そう思うと、身体が震えてくる。
今までみたいな情けないガタガタした震えじゃない。
何って言うか、『武者震い』ってこんな事を言うんだろうか。
気分が良いね。
崖下の巨大な穴を見て再度そう思う。
ついつい、にやけてしまう。
ふと炎のイメージが流れ込む。
【そうだ! 我はまだまだ成長する。この力が育った時、貴様は無敵よ。
楽しんで好きなだけ使えば良い】
まだ大きくなる、だって!
ドキドキしてきた。
これぞ待ちわびていた“ザ・チート”
そう思ってまたニヤニヤしていたけど、段々と冷静になってきた。
「興奮してたけど、これじゃあ獲物は捕らえられないじゃないか!
馬鹿馬鹿しい!!」
それに、あの“天使の声”が言っていた事を思い出せ!
“力に
大事な一言だったろ!
『欠片』ってこんな物騒なものだったのか。
確かに天使から与えられた“最後の条件”を達成するには必要なのかも知れないが、それでも、“今より育つ”って言うなら大きすぎる力だ!
危ない! 調子にのってぶっ放しまくるところだった。
考えるほどに、ゾッとする。
途端に心を読んだように【炎】が
【チッ、つまらぬ奴だな。もう我を押さえる方向に気持ちが傾いておる。
そんな弱気では、我は育たんぞ】
「もう充分だよ! 大体、お前、馬鹿かよ!
何も食べられないで俺が死んだら、お前も消えるんじゃないのか?」
思わず声に出して怒鳴る。
【……分かった、分かった。まあ、暫くは大人しくしていてやる。
我が大きくなる機会など、これから幾らでもあるからな。
獲物を倒したければ、我を呼べ。
だが悲しむべき事に、先程の力が我と貴様の今一番のものだ。
あれ以上は無理ぞ】
「あれ以上の力なんて、要るか!」
【まあ、必要な時に呼べ。では、な】
赤い炎のイメージは頭の中から消えない。
けど、声が聞こえる事はもう無かった。
次に出てきて、勝手な事をして見ろ!
俺にだって“手”はあるんだからな。
……信用して良いんだよな。なあ、天使の声。
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