第4話 再生
気付いたら、荒野の真ん中に立っていた。
着ているものは死ぬ前に部屋にあった服を適当にチョイスした様なものだった。
強い風の中ではフード付きのハーフコートが有り難い。
ポケットを探ったけど何も無かった。
いや、ボールペンが一本。
筆記具で何をしろと……。
見渡す限りの荒野でボールペン一本で何をしろと……。
まあ、ボールペンはさて置き、これからここで一人で生きて行かなくちゃならない。
怖いよなぁ。
“一生懸命生きなさい。人との繋がりを大切にして!”
人に出会えるまで生きていられるかどうかも分からない。
でも、後悔するのはもう嫌だ。
そう思うだけで、怖さが少し薄れた気がした。
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北西に見えた丘に向かって歩き始めた。
たった三十分ぐらいしか歩いていないけど、ものすごく足が重い。
そりゃ、そうだろう。
半年間、ずっと部屋に籠もってネットばかりやってた。
その前も中学に入ってからは、友達などいなくてさっさと家に帰ってゲームとマンガと本とネットばかりだった。
体力なんて、ほとんど無い。
小学生の頃は、バスケットもバレーも人並みには出来た気がするんだけどなぁ。
成長期に何もしなかったのって大きいよな、って思う。
でも、今からでも遅くないだろう。
とにかく頑張ろう。
今、向かっている先には林が見える。
あと、近付くにつれて水の匂いがしてきた。
流石に水が無ければ死んでしまう。
とにかく生きなくっちゃならない。
何もせずに
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林の中、崖を少し上がったところで洞窟を見つけた。
少し下ると沢があって水も飲める。
でも、それだけだ。
この世界に来てから二日。
口に入れた物はイチジクのような木の実が5つ。
それから水、それだけだ。
これでも一種懸命なんだけど、俺じゃ精々これが限界かなぁ、と思う。
腹が減るって辛い。
もう、それだけで涙が出て来る。
あと、まずい事に何やら獣がいる様な気配がする。
何か動物の臭いを感じる。
この洞窟は、崖を四メートルぐらい登った処にあるから、いきなり襲われる事は無いと思うけど、とにかく石を沢山集めておいた。
上から下に投げれば、少しぐらいの効果はあると思う。
マンガで読んだ戦国時代の攻城戦のシーンから思い付いた。
マンガもたまには役に立つ……と、良いんだが。
洞窟の奥は光が届かないので奥までは進めないけど、見える範囲にあった大きな岩も入り口に集めた。
これなら、野犬ぐらいはやっつけられるだろう。
“やっつける”と言ったけど、それって早い話が“殺す”ってことだよな。
俺に出来るのかなぁ……。
それに集めなきゃならない『
最初の期限は三年。
一つ手に入れるたびに探査期限を一年伸ばしてもらえるそうだけど、三年ってのが長いのか短いのかも判らない。
“一生懸命生きなさい!”
今は、あの言葉だけが心の支えになっている。
火が欲しい、そう思いながら今日も日暮れと共に身体を丸めた。
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