第9話 初日

四月三日


とうとうこの日が訪れた。

小学校卒業式。


ランドセルともついにお別れだ。

皆、胸に花を付け、廊下に並んで教室を後にする。


もう泣いてる奴もいるが、こういうのはムードに押されて泣いてしまうものなのだ。


体育館では皆の両親が揃っ…うちの家族がいるのは分かるが、駒鳥鵙家こまどりけも全員揃ってる!!!

舐めてた…駒鳥鵙家なら来そうだ…


六花と小町に至ってはスーツに伊達眼鏡と教育実習生さながらの出で立ちだ。

うちの親父がいるのも違和感あるなぁ…



在校生のお別れの言葉。

保護者向けに練習した呼びかけ。

卒業証書授与。

校歌斉唱

ここで一旦戻って先生とお別れ。

その後は家族と合流したりして帰ったりする。



うちの家族+駒鳥鵙家は人数多くて目立つから、すぐ分かった。


「六花、ちょっとこっち来て!」


頭に疑問符浮かべて猫口でこっちにトコトコやってくる。

「紹介しろってうるさいから…こっちが杏海波からももみなみ、隣が鵲安波かささぎあんな。何かあると助けてくれる大事な友達。で、海波、安波。こっちが俺の彼女、初瀬川六花はせがわろっか。宜しくな」


「彼女の前だからって無理に俺って言わなくていいのよー!」


「うんうん!ツッキーは自然体が一番!」


「初瀬川です。月巴をこれからも宜しくね!この人、一人になると落ち込んだり考え過ぎたりするから」


「流石、月巴ちゃんの事理解してるわー!」

「大丈夫だよ!心折れそうになったら相撲で稽古つけちゃるから!」


だから相撲部は選ぶなっ!

この後すぐ海波と安波は親に見つかって連れて行かれた。



「六花ごめんな、急に」


「ううん、紹介してくれるのって嬉しい…」


「二人ともー!家族で記念写真撮りますわー!」


「そういえば六花の家族も来てくれててびっくりしたよ!」


「数年後には皆家族なんですよ?」


「何だろう、気恥ずかしい!」


六花がくすくす笑ってる。

駒鳥鵙家の皆もお祝いしてくれて嬉しい。


撮った記念写真は、改めて見ると皆の優しさが凄く出た良い写真だったので、コンビニでプリントしてフォトフレームに入れて部屋に飾ってある。






入学式!!!!


校舎が違うだけでメンバーも一緒なので、不安要素はなかった。

海波と安波も勿論一緒だ。


「新鮮味ないよなー!」


「なんか面白い人入ってこないかな?」


そういうのが一番怖い要素だよ!


「そういやツッキーかなりイメチェンしたな!」


「中学デビューですねー!」 


いじられると思ったが批判的な意見が無かったのでオーケーとしよう!


入学式は校長の長い話を聞いてクラスで話聞く程度だったので終わるとそそくさと帰る。

今一番気になるのは六花の反応なのだ。


いつもの場所にいくと、六花がいない。

時間が早すぎたからお昼ご飯かな?

石段に座って待つか。


鞄を膝においてうつ伏せで少し目を閉じる。

ここ数日バタバタしてたから疲れた。




「……し…もし…?風邪…き…ますよ…」


なんか起こされてる。

寝ぼけ顔を他人に見られたくないのでうつ伏せのまま目をこすりシャッキリさせる。


「あ、すみません!人待ちしてる間に寝て…」


「え―――――!!!」


吃驚した!周囲の鹿も全力で逃げたぞ!

声を上げたのは六花だった。


「え、まってやばい…月巴がカッコよくなった…」


実は髪の毛をショートにして、制服も今の時代の流れなのか選択出来たのでブレザーとズボンにしたのだ。


「写真撮らせてください、お願いします」


「巫女さんが参道でガチ土下座すんな」


五分位写真撮ってたけどそんなにいらないだろ…

スマホの連写の音が止まらなかったんだが。


「満足出来たか!」


「はい!今日は満足です!」


明日以降が怖えぇ



「でも何でそんなボーイッシュに?」


「横にいるのが付き合ってる人って分かってもらえるように…」


「ほんっっっとーにやきもち焼きさんになりましたねー!私はめっちゃ嬉しいですが!」


「前も行ったけど…可愛すぎる彼女がいると不安になるんむぎゅ」

笑顔で六花が頬擦りしてきた。

誰に見られてるから分からないから一瞬だけちゅーする。


「参拝者様、参道での彼女への接吻はご遠慮願います♡」


「参道での土下座もな」


何はともあれ六花の反応が良くて一番安心した。

少し背が伸びたので、期待を込めてズボンの丈を長めに取ってある‥

胸囲も少しだけ上がった!

神様ありがとう…



その日の夜。

風呂に入って髪を乾かして、スキンケアをする。

髪が短くなったので圧倒的に乾かしやすい!

六花にもこの髪を気に入ってもらえたみたいで良かった。


ペケペケッ


六花からのチャットだった。


『通話していい?』


『うん。』


程なくして六花から着信があったので取る。


「もしもしー」


『お前の可愛くて大事な大事な彼女は預かった。返してほしくば婚姻届に自分の名前を書いてオアシカまで持ってこい…』


「突っ込みどころが多すぎて整理券いるわ!」


『えー!もし本当に私が捕まったらどうするつもりなんですかー!?』


「そもそも六花を捕まえるのが困難だし、犯人が可愛くて大事な、とか言ってるし、人一人の対価が婚姻届だからな?これもし犯人いたとしたら絶対小町だから!」


『うにょれー!お姉ちゃんめ!月巴はやらぬ!がっでむ!』


論点、大いにズレる。 


「で、通話してきたのは何か話があるのか?」


『彼ピの声が聞きたかったんですー!』


「彼ピはやめなさい」


『好きぴの方が…?』


「どっちも却下」


『しゅきぴにダメ出しされてメンブレつらたにえん…』


「大丈夫か?強めのお薬持っていこうか?」


『大丈夫なのー!今日の月巴がそれだけかっこよかったのー!』


「イメチェン…少しドキドキしてたけど六花が気に入ってくれたのなら良かった」


『参道で寝てる姿から月巴と気づかなくて普通の参拝者さんみたいに声かけちゃいました!』


「それであの起こし方だったのか」


『起きた瞬間二度惚れしましたけど…流石私のスパダリです!』


「流行り言葉についていけないJC…」


『ふふ、少し前までJKだったので流行り言葉には敏感だったんです!』


「JKの六花見たかったなぁ…」


『良いですよー!写真見せるのと制服着るのとどっちがいい?』


「写真でいい!制服姿とか見たら理性やら色々ぶっ飛ぶ!」


「メモしときますねー…制服っと☆」


『六花さーん!お話聞いてー!』


『次のお泊り日が楽しみですー!』



その後はいつも通りのグダグダな話をして「おやすみ」して通話を切っ…

 バターン!

「電話終わりましたかー!」

「雪、絶対聞いてたろ?」


「大丈夫ですわ!秘め事以外は録音録画しない主義ですからっ!!!」


「いい主義でいらっしゃる!」


「実の妹からの賛辞…心地よいですわ!」


「褒めてねぇ!そういえば雪は彼氏とかどうなの?」



「今の所いませんわっ!でも実の妹よりカッコイイってなるとハードル高めですわねー!」


「身近とか芸能人とかでもあまり好みの人いない感じ?」


「そうなんですのー!仕方ないからチャット友達と毎晩好みの男性について語り合ってますのー!」


「チャット友達なんかいたんだ?学校の友達?」

「いえー!駒鳥鵙お母様ですわー!」


お茶吹いた。



「おま…駒鳥鵙お母さんとチャットまで!?」


「はい!もうすっかり親友レベルですわ!」


雪のコミュ力怖い。






入学式から数日…何もかもが新鮮でそこそこ楽しい。


友達も数人増えたし面白い先生もいた。

ただ、部活は入らないし水泳は謎の体調不良で休む所存。初志貫徹!


帰ってから泊まり準備して、また蔵にあったじいちゃんのゲームソフトを土産に鞄に入れる。


「月巴ー?今日はドーナツ持っていくのー?」


「うん、持っていくー!」


下に降りていくと母さんがドーナツ代と昇給したお小遣い、それに大きなプリンの詰め合わせを渡してくれた。


「ほんとすっかり仲良しさんねー!」 


「うん

「避妊はちゃんとするのよ?」


お茶が鼻に入った!

何て事言うんだ娘に!


「げっほえっふ!どっちも生物上メスだから!」


「おかあさん、最近駒鳥鵙奥様と雪とお話してるんだけどね?あなた達二人なら出来そうって見解で一致してね?」


チャットからグループチャットになってる!


「ないからないから!行ってきます!」


親からどういう目で見られてんだウチは!




ドーナツを買って、オアシカへ向かう。

丁度カウンターに小町がいたから、もう一袋買ったドーナツをそっと差し出すと小声で「六花風邪ひいてるみたいだからみてあげて?」と教えてくれた。

気持ち早足で下に下りる。



ドアを開けベッドに向かう…六花は息が荒い様に感じた。

体温計を脇に挟むと38.5℃…まぁまぁ高いな。


冷蔵庫には冷えてる枕がない。


薬も元々なかったのか数個飲みきって既になかった。


室内換気を回して、東向きストリートのドラッグストアにいく。



冷えてるぴったん、漢方の飲み薬、解熱成分重視の風邪薬、栄誉ドリンク、ゼリー系飲料、スポーツドリンク、鎮痛剤…こんなもんか?

近いし足りなかったら買いに走ればいい!



六花の部屋。


六花の辛そうな声が微かに聞こえる。


「六花?薬買ってきたけど飲めそうか?」


「…」少し目を開けたが辛そうだ。


薬と漢方ドリンクを口に含む。

意図を理解したのか口を少し開けた。

口移しでしっかり飲ませ、スポーツドリンクも少し飲ませる。


それにしてもひどい汗だ。

頑張って着替えた後もあるが、手で触って分かる位汗をかいている。


着替えと下着とシーツを用意する。


確かもう1組布団があったはず!


タオルを何枚か濡らして、レンチンで蒸しタオルを作る。

掛け布団も汗を吸っているので、一旦避けた。


「六花?ごめん、少し起こすからな?」


上半身を起こし、上を脱がせる。

蒸しタオルが覚める前に背中をしっかり拭き、前も谷間や胸の下など汗の溜まってる場所をしっかり拭く。


別のタオルにかえて、顔の汗を拭き、両耳を綺麗にする。


「…んにゃ」


拭いた耳を少し噛んで見ると「ふ…んぁ」

面白い、弱点発見!


身体が冷えない内にシャツを着せる。

一旦寝転がせてパンツを脱がせる。

流石に恥ずかしいのか手で隠している。

3枚目のタオルで両足を拭いていく。

指もしっかり拭いて、綺麗な面で残った場所を拭く。


「ん…」


我慢我慢、六花風邪だからな。

がっつり拭いた後新しいパンツを履かせる。


次は…シーツだな。


「花鳥風月!」

六花の背中側に障壁を張り、六花を上に少し持ち上げる。

その隙にシーツと、枕カバーも交換!

花鳥風月をゆっくり下ろして六花を寝かせた後、予備の掛け布団を被せる。

よし、一通り出来た!



「凄いわねー!私の歴代彼氏と比べても断トツNo1だわー♪」

ビクッ!


「…小町、いつからそこに?」


「いつからでしょー?♪」



此れは割と初めから見てた顔だ…六花に集中してたから全く気づかなかった…


「そうそう、耳噛んでる月巴ちゃんのSっぷり見惚れてたから忘れてた!ご飯何にする?六花は今日は厳しそうだし、下に持ってくるわよ?」


みーらーれーてーたー!


「あ、じゃあサンドイッチで。片手開けてれば看病出来そうだし。」

「OK!少しボリューミーなサンドイッチにするね!」


小町が上がってから、六花を観る。

まだ息は荒いが、先程よりはマシな気はする。

おでこに冷えてるぴったんを貼って熱が下がるのを待つ。


六花が熱出すのは初めての事だったから、早めに対応出来て良かった。

常備薬の種類増やさないとな。


喉痛かったらプリンとゼリーあるし、洗濯は明日すればいいとして、布団はコインランドリー行かないと駄目だな。

余りに熱が酷いなら座薬も買わなきゃ駄目だし高熱が続くよ…


「わっ!!!」

「おお!」


小町に気づかなかった!

「思い込んだら駄目よー!人事を尽くして天命を待つ!っていうじゃない?」

「ありがと。色々考えておかないとってシミュレーションしてるとついつい…」


「だーいじょーぶ!六花は年二回位は風邪ひいてるから!だいたいが下着のまま窓開けて寝て風邪引いたとかそんなんばっかだから!」


「うわー、六花らしい!」


「重い風邪ひかない位の体力はあるから安心して看病してね!私なんか看病しながら新作のゾンビ系ホラービデオ大音量で流してたからね」


「看病の意味!!!」


「肉が進むのよっ!♪」


「病人の横で!?」


そういや以前のホラー映画鑑賞会でもジャーキー食べてたな!



とりあえず立ち話もなんだから、サンドイッチ貰ったお返しにでっかいプリンを渡す。

「あー!これよく見るけど食べたことない奴!有難うね!ドーナツは帰ってからにしよっ!」



六花の横にソファ二個持ってきて座る。


六花がまだ熱が辛そうで心配だ。

「この子職業病というかなんというか、身体がきつくても聴覚は起きてるのよねー」


「え、そうなの?熟睡して欲しいんだけど…今も寝てない…?」

「そうみたいなのーさっき見ただろうけどVIO脱毛の話とか」

「わ―――――!!お姉ちゃんらめぇれれ…」


あ、突っ込みきれなくてダウンした。

「そんなデリケートな話していいのか?」

六花の頭を枕に戻して布団をかけなおす。

「いいのいいのー!今どきの女子なら結構やってるから!私は前からだけど六花はこんなイケメン彼女出来てからだもんねー♪」

この話聞いて良かったのか…?


「六花の脱毛ご乱心事件はまた今度話すねー♪」

「おねちゃだからそのはなsh」

スパーン!!!

小町、病人にスリッパとか容赦ねぇ…


口から魂出かかってるけど、ぐっすり寝れそうだからとりあえず良しとしよう。


「さっ、プリン食べたし帰るか!月巴ちゃん、悪いけどお願いね!」


「こっちは安心していいから気を付けて帰れよ?」


「はーい!痴漢や不審者は轢きまーす!」

「強く轢くなよ?」

「その時だけ偶然にもブレーキが壊れてるかもしれない!」

殺る気が半端なかった。



小町が帰って三時間位経った頃、六花が少し目を開けた。


「おはよ、まだ夜中だけど。柔らかいものなら食べれそうか?」

小さくうなづく六花。

「プリンとゼリー飲料どっちがいい?」

「ぷりん」

「ん、待ってろよ。」


冷蔵庫からプリンと小さなスプーン持ってきた。

起さない様に、且つ気管に入らない様に、なるべく小分けで口に入れていく。

なんか泣きそうな顔したから頭撫でてやると本格的に泣いて慌てる。


「大丈夫だから…俺が傍にいるだろ?」

さり気なく一人称を『俺』に変えてみる。

六花が心細い時はこっちの方がいいかも。

親指で六花の涙を拭いて、プリンを少しづつ口に運ぶ。


「まだ食べれそう?」

ふるふる。小さく首を振る。

プリンをラップして冷蔵庫に戻してから、熱を測る。

38.1℃。薬とスポドリを少し飲ませて、冷えてるぴったんを交換する。


汗は…少し拭いておこうか。

服はそのままで乾いたタオルで服の中から吹いて、半分寝がえりを打ってもらって背中を拭いた。

朝位にはもう一度服着替えさせるか。



朝10時頃まで六花は少し寝てた様に思う。

目を覚ましたから熱を測る。

37.9℃。

微妙なとこだがまだ起こさないでおこう。


食欲は少しありそうだから、ゼリー飲料飲んでもらって小腹をプリンで満たす。

風邪薬と漢方ドリンクを食後に飲ませる。

少し元気が戻ったのか着替えはセルフでしてもらう。

ウチがやるのは恥ずかしいと断固拒否されたので。


服を脱いでる間に蒸しタオルを作って渡す。

蒸しタオルあちあちしてる間に背筋を少しだけ舐めたら「ひゃっひ」と、ちょっと変な声出して笑った。ジト目で抗議する六花が可愛い。


見ない様に後ろ向いてたら突かれたので布団をかけ、冷えてるぴったんを交換してまた横になってもらう。



よし!今のうちに洗濯をしよう!


ドラム洗濯機を回し、洗い物をする。

何だかんだ心配なのか、小町がチャットで連絡くれるので熱が下がってる事を返信。

六花がいつもチェックしている番組は録画も予約も出来てる。


ドラム洗濯機が止まったので、オアシカの上にシーツや枕カバーを干す。

オアシカの上から見える桜はもう散ってしまってて少し寂しい感じになっている。


今更ながら、六花の部屋のお風呂には浴室乾燥機があるのを思い出したので使ってみる。

何気にこの部屋設備いいなぁ…



六花は薬が効いたのか寝たので、こっそりコインランドリーに向かう。


自分の家より若干遠いが、それより待ち時間が退屈だ。

見られない様に結晶を一枚出し、強度を上げたり変化させたりしてみる。

あの黒ずくめが言った『お前は凡そあらゆる事が出来る』という言葉。

調べてみたが、あの様な容姿の親類縁者はいなかった。

大昔に分家した同じ技を使う奴、もしくは知らない縁者がいたのか?

あの男が最後に消えた移動技も気になる。



『♪てろれっ!てろれっ!てろれっ!』

ポテト揚がる音―――!!!!!

コインランドリーの終了音を魔改造すなっ!!!


ふわっふわの布団を抱きかかえ帰路につく。

布団を抱えて家を通り過ぎるというのはどうも違和感ある。


何か買い足すものなかったかな?

『六花食欲どう?』

小町からチャットが来たので、ゼリー飲料とプリンとスポドリを接種した事を伝え、熱が下がる様なら美味しい中華粥でも作ってあげてってお願いしておいた。


六花の部屋に帰宅。

布団を収納して、六花の熱を測る。


熱は37℃を切った。顔色もましになったし、小町に中華粥のゴーサインを出しておく。

少し日が暮れてきたから屋上に上ってシーツと枕カバーを回収。

浴室乾燥機の服も乾いてたので全て畳んで収納。



夕方六時。


念の為体温を測るが完全に下がったようだ。

あとは発熱後の体力を回復してもらうだけだ。

掃除でもしようかと思ったけど、六花を起こしたくなかったのでやめておいた。



「ふにゅぅぅぅぅぅぅぅー!」六花が目を覚ました。


「気分はどうだ?」


「ましですー!少しお腹も空いてる!」


「小町に中華粥頼んでおいたから、食べれるだけ食べたら食後に薬も飲んでおこうな?」


「はーい!」


「おお、丁度良かった!」


小町が御粥を持ってきてくれた。

お礼をいい、小さいスプーンを持ってきて、フーフーしながら六花の口に運ぶ。

「熱くないか?」

こくこく頷く。ちょっとハムスターみたいだ。




「あれ?お姉ちゃんどうしたの?」


「月巴ちゃんが御飯食べれるか聞きに来たんだけど寝ちゃったか!」


「どういう事?」


「さっき気づいたんだけどね…昨日から六花の様子をチャットでやり取りしてたんどけど、チャットの六花の起きた時間、返信時間見てたら…どうやら寝ずに看病してたみたいよ?」


「…え?」


「で、私が昨日作ったサンドイッチも手を付けてないみたいだったから、余程心配だったみたいね」


ベッド横でベッドに顔乗せて寝てる月巴を見て六花はまた涙が込み上げて来る。


「ただの風邪でいつもの事とは言っておいたんだけど…初めての事だから不安になったのかしら?」


小町が萌え袖で六花の涙を拭う。


「ちゃーんと愛して、愛されるのよ?お姉ちゃん、六花が幸せなのがいっちばん嬉しいから!」


泣きながら頷く六花。


「あ、でも不仲になったらもらうからね?お姉ちゃん今回の事でちょっと本気になったわ♪」


ふるふるふる


イヤイヤしながら月巴に覆いかぶさる六花を見てケラケラ笑う小町だった。


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