第7話 休日
新年も四日になり、六花が漸くお休みに入った。
三連休を貰った様なので、まずは約束の初詣に行く。
場所は他でも良かったんだが、夏月大社で!って六花の希望に合わせた。
三連休は六花の部屋に泊まるつもりだから、六花の部屋に服などを置いて、六花とオアシカを出た。
「♫はっつもーでー!はっつもーでー!」
「連勤の後なのに…元気だな!」
「食後のデザートが別バラな様に、月巴とのデートは別体力なのでーす!」
「謎理論だが…お…おう」
初の鳥居で一礼をして潜り、長い参道を進む。
「流石に屋台は減ってるなぁ。」
「一日が一番混むので、二日、三日、と段々減っていきますねー」
「お昼ご飯どうする?屋台で買うのもいいし、どこかへ食べに行ってもいいし」
「それよりまずは…巫女さんズに月巴を見せたくないので、変装します!」
「自分で自慢してたのにっっ!!??」
「自慢したからこそ!横恋慕されたり、ワンチャンかけてチャットアドレス交換しにくるかもしれないじゃないですか!!!」
「あの、ウチそんなにいいものじゃないぞ?心配のしすぎだ!」
「月巴は無双のかっこよさなので心配が安心をオーバーキルするんですー!」
「会心の一撃かっ!…堂々としてろ、六花以外興味ない」
手を繋いで前を歩く。
「ハートに直球がー!安心しますー!」
御本殿まで着いた。
お賽銭入れて二礼二拍手…六花が怪我や病気しませんように…ついでにウチの身長と胸囲お願いします…一礼。
「終わった、六花は?」
「お願いしましたー!」
「
「引きましょう!勝負です!」
社務所で初穂料を渡して1枚引く。
六花はマフラーで顔隠してたのに即バレして皆に手振られてた。まぁ、露骨に怪しいからな。
「いっせーのーで!で開封ですよー!」
「よし、いっせーのーで!」
六花「大吉!」
月巴「中吉!」
「二人ともいいですねー!」
「成長の年にしたいな、色々と!」
「おおおお『結婚するが吉』って書いてますー!市役所開いてましたっけ!?」
「見上げた行動力!!だがまだ小学生だからな?」
「えー…法律がけちくさい…」
「法律にそんな事言ったの六花が初めてだろうなー」
六花の手を引いて歩き出す。
「もうちょい先な」
六花がニコニコと手を握り返したから分かってくれたのだろう。
その後は屋台で六花と小町のりんご飴だけ買って、ご飯を食べに行く。
東向ストリートにマタドナルドとモスドバーガーがあり、モスドは味が美味しく、マタドは少し安いのと、ポテトが美味しい。
今日は二人ともポテトの気分だったのでマタドのセットにした。
店内が混んでいたのでテイクアウトで六花の部屋で食べる事にする!
お休み最高!
てか、もうすぐ中学に上がるのかー!
エスカレーターだからメンツとか変わらないし実感ないなぁ。
部屋着に着替えてる二人は、人を台無しにするソファで台無しになっている。
「たーべたー!」
「でもファストフードってお腹すくの早いですよねー!」
「それなー!」
六花の座ってる場所の足の間にウチも座って持たれかかる。
「おお!これは!食べ過ぎでお腹が出ておる!」
六花のお腹に頭をバウンドさせる。
「そんな事ないですー!ちゃんと鍛えてますー!」
うん、確かに腹筋が割れている。
そんなこんなでまったりしていると小町が降りてきた。
「小町、お疲れ様!」
「おかえりお姉ちゃん!」
「こまこまじゃないの珍しいな!」
「実家帰ると昔の呼び方が戻るのですー!」
「ありがとー!流石に四日ともなると人が落ち着いてきたわねー!」
「それでも忙殺されてるだろうに…はいこれ!」
「おー!りんご飴懐かしー!有難うね!」
六花が一緒に食べたかったのか、袋剥き出して一緒に食べ始めた。
六花があーんしてきたので一口食べてみる。
パキパキシャリシャリと不思議な食感だなぁ。
「二人とも自然にあーんしてるね!仲が良くてお姉ちゃん安心だわー!」
六花は満面の笑みを浮かべてるが、ウチは少し気恥ずかしい。
三人にお茶を入れて、少し談笑したとこで小町が切り出した。
「新年だし、月巴ちゃんのお年玉代わりに…六花の昔話でもしましょうかー!」
「え?」
「おおおー!」
「おねえちゃばれるとはずかむぐもぐぐ」
六花の背後に回って両手で口を封印した。
私は
泣く子も黙らない花のJKだ!
私には同い年で血の繋がらない妹がいる。
今、人生初めてのラブレターを貰って返事が書けずに机で突っ伏して、頭から煙出してるのが私の妹・
昔、色々あって暗かったんだけど、餌付けしつつ蝶よ花よと育てたから、まー可愛いのなんの!当社比!
可愛いし天然ボケだしツッコミやすいし、理想の妹に育った!
中途半端な男にはぜ―――――ったいにやらん!
まずは私を倒してからにしろ!(シュートボクシング歴4年・タイトルホルダー)
煙出してる六花の頭をうまし棒サラダ味で突いてるボブカットの友人が
「うー、お姉ちゃんどうしよう…?」
「うーん、とりあえずお話だけでもしてみるとか?」
「顏も知らない人なんだけど、お手紙返信しなきゃ…でもラブレターの返信なんか書いたことないから、何を書けば正解なんだろ…」
悩んでるが栞から貰ったうまし棒はしっかりもぐもぐしてる。
「文通じゃないけど、相手の事を知ってみる為に何回かやりとりしてもいいかも?尤も興味があればの話だけど~」
栞の意見を採用したのか、ルーズリーフを1枚出し、シャーペンの芯を2回出して書き出し始める六花。
『拝啓』
「固い!もう少し緩めに!」
『平素は弊社の商品をご愛顧賜りまして誠にお礼申し上げます』
「企業か!それは企業がお詫びメールとか出す時に使うテンプレのやーつ!」
六花、テンパるとアホの子になるからなぁ…付き合うなら相当しっかりしてる子に任せないと。
『突きが綺麗ですね。』
「どこの格闘家だ!寸評すな!」
栞も六花の天然ボケに突っ込む様になって来て嬉しい限りだ。
『会いたくて会いたくてバイブレーション」』
「流行り曲か!マナーモードかっ!もう少しまともな出だしにしようぜ…」
『拝啓、ここんな私に手紙を下さり、あり有難う御座います』
「お~いい感じだね~!手紙で噛んでるけど。」
『楽しかった、運動会』
「運動会!じゃない!」
「六花六花、難しく書こうと思わないで、簡単でもいいから」
「…むむー」
『お手紙有難う。お姉ちゃんよりかっこよかったら好きになるかもです』
目頭が熱くなって思わずハグハグスリスリしてしまう私!
栞は『小町は相変わらず重篤なシスコンだね~』ってニコニコしてる。
だが、それだけだと互いを知るきっかけも無くて可哀想だし、苦肉の策として追伸で『時間あるなら今度の土曜日に今上映中の【何かのはらわた~とあるディレクターの最後の録画テープ】でも一緒に見に行きませんか?』と添えてみたがそれ以来連絡は帰ってこなかった…
「…こうして初めて六花が貰ったラブレターは返らぬままとなったの…」
「それ、小町の追伸が致命的だったんじゃないか?」
「ホラー程度で臆する男に娘はやらん!」
「娘って言ってる!いやー、ほら、ウチもホラー苦手だし…」
「月巴ちゃんは別!食後のデザートが別バラな様に、月巴ちゃんは別なの!」
流石姉妹、妹と同じ様な事言ってる。
「だーってほら、入院する位頑張って六花守ってくれたじゃない?女の子なのに言動が男前だし、そこらの男より断然かっこいいよー!」
六花が横でりんご飴の棒咥えながらコクコク頷いてたが、喉衝いたら危ないので棒を取る。
「ほらーそういうとこー!女子はちゃんと見てくれる人が好きなのー!ねー?六花!」
頷く六花。太陽光で首降るおもちゃか!そして忘れがちだけどウチも女子!!!
「超優良物件よねー…六花、月巴ちゃんちょうだ…」
「いーやーでーすー!お姉ちゃんも大事だけど月巴は私のなのー!」
喰い気味で突っ込まれてケラケラ笑う姉と、ウチをハグでグイグイ締め上げる妹。
ああ、血の繋がりがなくても本当に姉妹なんだなー
ウチ、このままハグで真っ二つなんじゃね?
小町が帰って、以前見れなかった覇権アニメを見てたら六花が疲れが出たのかウトウトしだしたので、ベッドに連れてって寝かしつける。電気消して六花の頭撫でてたらウチも自然に意識が落ちた。
連休二日目。
朝少し早めに目が覚めた。
六花はまだ寝息を立てていたので毛布をかぶせる。
洗濯しよう!
六花のドラム洗濯機を開けてみると…あー今まで何回も見てきたハムスターやクマのつなぎが多数。
液体洗剤と柔軟剤を投入してスタート!
最近のドラム洗濯機は勝手に洗剤と柔軟剤入れてくれるから便利だ!
裏口からオアシカの屋根に登れる。
ドラム洗濯機はどうも乾燥がイマイチなので下着以外は干す事にした。
寒くはあるが幸い今日は日当たりがいいので、物干し竿につなぎを通していく。
よし!終わった!
…イタリアのヒゲ配管工や、クマやハムスターのつなぎが列を成してるのが珍しかったのが、外人さんやら通行人が写真撮り始めた…ごめん小町…ちょっと営業妨害したかも!
夕方、洗濯物を取り込む。
下着類は室内が温かいから乾いてる様だったので取り込む……どれが勝負下着だったんだろうって一瞬考える。
いやいやいや!考えない考えない!
ハンガーを通してハンガーラックと下着ケースに入れ、冷蔵庫からバナナジュースを出す。
人を台無しにするソファに座りバナナジュースを一口飲んだら、六花が起きていたのか後ろから覗き込んでいた。
上向いて六花の頭を近づけて逆さまのちゅーをする。
まだ寝起きだからウチの背後でほわほわしていたので、バナナジュースを口あたりに差し出すと勢い良く飲み始めた。
口を離すとウチに抱きついて甘えてるので残っているバナナジュースを飲み干した。
「今日はよく寝たな。水分足りないだろ?取ってくるけど何がいい?」
「んー…冷たい牛乳?」
ホットの方が良くないかな?
などと思いながら冷たい牛乳を持ってきた。
「月巴、一口含んでもらえます?」
何だ!?笑わせるとか止めろよ?と思いながら一口含む。
コップを下げた瞬間、六花がいい笑顔で顔近づけてきたから、意図を察した。
口から口へ、少しずつ牛乳が移る。
こくんこくんと六花の喉が小さく鳴る。
牛乳がなくなる頃には舌を絡めていた。
六花の弱点の後頭部に手を回すと六花が堪らず声を漏らす。
「月巴…わた…し…」
『私ですわー!私ですわー!私ですわー!』
気が抜けて二人とも人を台無しにするソファに倒れる。
「…六花、あれ、うちの実の姉の声じゃね?」
「はい…お母様と雪さんはチャットアドレス交換してたんですが、雪さんは着信音声あれがいいそうで…」
既にチャットは交換済だった!!!
情報漏洩疑惑!
「いい状況で雪の声聞くと物凄く萎える!」
「ふふ、いい状況だったんですかー?」
「そーだよ!悪かったな!」
六花がハグしながら声を殺して笑ってる。
で、雪のチャットなんだったんだ?
六花がスマホを確認する。
「『ごゆっくりー♡』って書いてますねー!」
姉の直感が恐ろしすぎる…
ご飯タイムだ!
六花と二人でオアシカに上がる。
「お姉ちゃんお疲れ様!」
「小町お疲れ様!」
「おつかれー!三が日過ぎて休日手当なくなったのにまだまだお客様減らなーい!」
飲食業のリアルな嘆き!
「ところで二人とも…えっちな事してた?」
二人が同時にビクついたので余裕で確信される。
「反応も似てきたから面白いなー!一緒にいると似てくるもんねー!」
六花も顔赤いからウチ相当赤いんだろうなー!
「仲が良くてお姉ちゃん嬉しいよ!さぁ、やらしい事した後は美味しいご飯!」
言い方ーーー!!!
ニンニクたっぷりの肉料理出て来ました。
カランコローン!
「あれ?閉め忘れたのかな?すみません、もう閉店…」
誰だ?
文楽に出てくる黒子の白バージョンみたいな…何がを持っている。
六花が動かないから害はなさそうだが…
えっ!えっ!こっち来た!
携えていた箱をウチに差し出す。
…なんか喋れ!
仕方ないから受け取ると…カランコローン!
…出て行ったし…
「何だろ何だろ!?爆発物!?人の指とか耳とか!?」
ホラー好きの発想!!!顔がワクワクしてる!!!
「開ける前に聞くけど《社》の関係者…とかじゃない?」
首を左右にブンブン振る駒鳥鵙姉妹。
爆発物の危険もある…
箱を二人から離れた場所に置き、結晶結界を張る。
「
結界内に結晶を発生させ、箱の周囲を面単位で切っていく。
『おおおおー!』
なんか後ろが盛り上がってる!拍手今いる!?
箱を開くと緩衝材で包まれていたので、それも結晶で切ってみた。
……?爆発物ではない。
結界を解いて箱を再びカウンターに戻し、中の物を取り出して見せる。
「月巴、これって!」
「ああ、最近見たなこれ」
取り出したのは、あの黒ずくめが腕にしていた腕輪一個だった。
六花の部屋に戻った。
持ってきた白い奴も気になるが、誰がこれを送ってきた?
白い奴が送り主なのかもしれないけど、黒ずくめの奴が頭にチラつく。
『考えない、考えない!』
六花に見抜かれて頭撫でられる。
「これは戦え、守れって言われてるんだと思う。誰かの掌の上で踊るのは嫌だけど、強くなれるなら…六花や他の誰かを守れるならやらなきゃ。」
六花が笑顔で頷く。
「でも、出来るだけ二人で!安全に逢禍を祓っていきましょう!」
「ん…」
「あの黒ずくめさんも、もしかしたらいい人かも知れないじゃないですか?」
「チビとか言われたし…六花に何か話してたのも腹立つし。鼻に鹿のフン詰め損なったし」
六花がハグしてくれたのはいいが、声殺してめっちゃ笑うのなんでだ!?
「でも、何話してたか聞かないですよね?なんで?」
「きっと、意味があるんだろ?六花が話さないのはそういう事って思ってる」
「さーすが!お姉ちゃんに狙われる男前!」
どういう褒め方されてんだ?って思いながら心地よい頬擦りをされていた。
六花の連休三日目。
流石に一月も六日になれば世間はお仕事、お店もそこそこ新年の初営業も始めている。
六花とどうしよう?って考えて、食べ物買いに行ってアニメの続きを見ようって流れになった。
こう見えて六花は何でも視る。
自分が変身キャラなのに魔法少女や特撮も視る。
六花と居始めてウチも結構見ているので六花も色々勧めてくる
楽しそうに作品を勧めてくる姿は見ていて可愛い。
冬装備をしてオアシカの裏から抜けて、威勢のいい餅屋の横を抜け、東向きストリートに入る。
東向きストリートと大西ストリートを繋ぐ桜町ストリートは意外と色々店がある。
たい焼きのあんことカスタードを買って、無添加ドーナツの店でカエルのデコレーションを施したドーナツとクマのデコしたドーナツを買った。
ウチらその内太りそう…
ベーシックなドリンクは六花の部屋にあるので、たまにはオアシカのスイーツドリンクを頼む事にした。
いつもお世話になっているからたまには売り上げに協力せねば!
「私が注文するね!」って自信満々で言ったが大丈夫なのか?
「いらっしゃいませ!ご注文をどうぞー!お持ち帰りですかー?」
たまたま小町が応対してくれたんだが、半笑いを隠せてないじゃないか!
「テイクアウトで、抹茶クリームフラペンのLサイズ、シロップ抜き、調整豆乳に変更、コーヒーローストを追加で。あと、ダクモカフラペンのLサイズをキャラメルソース、チョコソース、チョコチップ、ホイップクリーム追加でお願いします!」
「はい、かしこまりましたー!お会計〇〇〇〇円になります!丁度頂戴しまーす!レシートを持ってあちらでお待ち下さいませ!有難う御座いまーす!」
待って待って、脳が付いていかない!
六花がこんな呪文を唱える今どき女子に見えなかった!
「えへー凄いでしょ?高校の時にフラペンのカスタムが流行ってね!お姉ちゃんと友達と三人でめっちゃ通ったから今でも得意なの!月巴は抹茶とか好きだから味深いめで、私はチョコチップとキャラメル追加でチョコの食感とキャラメルの風味を楽しめる甘々フラペンだよ!」
「おお…おう。味見させてね?」
「彼女の間接キスが欲しい気分なんですねー!」
今更間接キスで照れない!って思ってるとストローを咥えにくいのが人の性ってもんなんだ、うん。
六花が笑ってくれたからいいけど。
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