第4話 家業

 数日経ち、退院の日に母さんが迎えにきたので帰宅した。


 その後すぐに六花から連絡があり、怪我をさせてしまったので親に挨拶にいくとの事だった。

 まだ小学六年生だし気を使っての事だろう。

 …六花が家に来る…なんか不安しかないんだが。



 夕方、玄関のチャイムが鳴る。

 六花が来た。


 髪は後ろで纏めており、服装は清楚なワンピースだがまだ腕や脚に包帯が見え、ギブスがない辺りは流石神衣の再生能力と言えた。

 ワンピは小町に着せられた感が強い。


 ウチと母が出迎え、後から雪と親父が来た。

 勢揃いする程か!


「私、初瀬川六花と申します。この度は御息女に怪我をさせてしまい大変申し訳ありませんでした」


 丁寧に頭を下げる六花が珍しかった。普段あの言動だしな。

 そっと差し出される菓子折り。


「あらあら、いつもうちの子がお世話になってますー!あらーお気遣いなくー!」


「雪巴でーす!姉ですわー!」


 二人は朗らかだからすぐに和んだ。

 シャッ!計画通り!


 あとは親父だけなん…


「君かね?うちの子に怪我させたのは?一体どういう教育をされてきたんだ?仕事はどこに勤務しているのかね?」


 クッッッッソ親父!!!!!普段何もしない癖に言い方が腹立つ!


『仕事は夏月大社で巫女を…状況に応じて巫覡としても仕事をしております…』


 ……ちょ!親父がフリーズした!


「…大変失礼致しました!母さん上がっていただけ!飯の用意もだ!お茶は一番良いやつだ!」


 手のひらくるーん!もいいとこだ!

 てか何故巫覡の話を知ってるんだろう?



 夜御飯。

 六花も加えて今日は天婦羅と焼き魚と漬物だった。


「お母さんのご飯美味しいですー!」


「母さんのご飯は何作ってくれても美味しいですわー!」


「そんな大した事してないですよ、雪ったら!」



 母と雪はあんなだからまぁ六花と距離縮めるの早いのなんの。

 親父だけ変な緊張してるの珍しい。

 平静を装い酒飲んでるけど、ぐい呑震えてるの見えてる!



 そこで改めて話された巫覡のお仕事の話、ウチと仲良くなって、巫覡の仕事に巻き込まれた話。(進んで巻き込まれたが)

 結界に入れる話。

 先日の巨大逢禍と謎の男の話。


「そうですか、娘が力を使って龍脈を…」


「きっと私一人なら龍脈を切る他無かったです。修復に時間がかかり更なる襲撃にあってた事でしょう。」


「同じ手を使われない様に私達も龍脈は監視しておきましょう。それと…」

 今、私じゃなくて私達って言ったの聞き漏らしてないからな?


「娘が結界に弾かれない話ですが…御神刀をお借り出来ますか?」


「生身で大丈夫ですか?一応神衣に着替えますね」


 胸をポンと叩くと胸を中心に神衣が身体を覆う。母と雪が珍しくて目をキラキラさせてる。

 空を掴み、刀を出す姿に母と雪がもうアイドルに夢中な人並みにワクワク顔だ。


 六花が刀を親父に渡すと、両手で丁寧に受け取り、キキンッ!

 多重結界の張り方を知ってる!?

 一瞬で周りがブレる。


 六花も少し驚いていたし、雪も珍しいのか周りに触りまくっている。

 ただ、母は結界から弾かれてる。

 もう一度鳴らし、結界を解除した。


 突然周りの人が消えて母さんも吃驚だったろう。

 刀を六花に返し、親父が語りだした

「うちは要人警護等の仕事を生業とし、受け継がれてきたのはご存知かも知れませんが、元々は防御結界のみに特化した一族だったんだ。祖先が巫覡様と仕事をしている時期があって、ご縁で御神刀に結界を貼る能力を付与したのだ」


 えらいとこで繋がってたー!


「だから話を伝え聴きで知っていたのだ。あとは巫覡様以外で入れるのは逢禍と家の一族の血を引く一族だけだ」


 私も入りたかったー!って母が悲しそうだ。

 そうすると、先日の逢禍を作ってた男は…逢禍に類するのかな?


「ちなみに一族が入れる理由ってなんなんだ?」


 少し不機嫌そうに親父が答える。ちょっとイラッとするが我慢。


「一説には結界付与した時に結界内から点検する為、血族だけ入れる様に結界に細工を施したと聞いている。」


 それで初めから六花の結界に入れたのか…巡りあわせというか何と言うか…


(六花!六花!)

 小声で六花に話しかける


(娘さんを下さいって言うタイミング、今ですか!?)


(そんな打ち合わせしてないだろ!神衣出しっぱなしだからじいちゃんの仏壇の仏花が枯れたぞ!庭に影響する前にしまえ!)


 六花が慌てて神衣を戻したが、隣の部屋に見える仏花は真っ黒に萎れていた。





 夕食後も引き続きVIP待遇を受け、母と雪の質問攻めに逢ってる六花を放置し、風呂に入る。


 がっつり身体を洗う。


 頭は抜糸してないしまだやめておこう。


 髪は今セミロングだが伸ばすか切るか迷ってる。


 まだ少し痛みが残るがそんなの顔に出したら六花が気にしだす。



 風呂も上がってパジャマに着替え、部屋に戻る。


 今日は六花が泊まるはずだから布団二つ敷いた。


 まだまだ下で捕まるだろうから先に寝ようか思案していると、予想よりも早く六花が入ってくる。



 風呂上がりに母さんのパジャマを借りた様だ。


 それより布団に倒れこんで動かない…母さんと雪の質問責めで精根尽き果てたか?

 頭を撫でてやる。


 まだ髪が暖かくブロー仕立てなのか撫でやすく良い香りが。


 むくっ


 急に六花が起きて、のそのそと近寄ってハグしてきた。



「怪我はどうですか?まだ痛みますか?」


「大丈夫だよ。六花の方こそ肩と足大丈夫なのか?」


「大丈夫です!そんな事より吃驚です!月巴さんの力で助けてもらいました!」


「継承者にもなれない、自分も守れない力が、役立つ日が来るとは思わなかった。」


「そんなことないです!結晶の繊細な制御に加え、逢禍の残滓を祓ってしまうとか凄いです!」


 親父にも褒められた事ないのにっ!

 六花がすっと立って照明を消した。

 寝るの早くね?

 あれ?またハグされた。


(聞こえてましたよ!)


 何を!?なんで小声!?


(その女はウチのだ!って)


 あーなんかブチ切れて言った奴だ!


(…六花もウチを呼び捨てしてたじゃないか)


(心配で気づきませんでした…えへへ)


 ん、首を甘噛みされ…



 バターン!

「月巴ー!もう寝たかしら ー!」


 部屋真っ暗。


 抱き合う二人組。


 首噛まれてる。


 雪の頭の中で素早く計算が終わる。



「ごゆっくりどうぞー!♡」


「ちゃ、ちゃうねん!ちょっと戻って来てマイシスター!!!!」




 戻ってきた。


 照明は点けた。

 なんで4Kムービーカメラ持ってきたかはこの際無視する。


 まだ時間も早いし、女子会だ!


 下からお菓子とお茶を持ってきた。

 部屋に戻ると雪と六花が打ち解けてるのが伺えた。


「すっかり仲良くなったみたいだな」


「はい!雪巴さんが式には家族で参加しますって言ってくれました!」 


 色々突っ込みたいが逆に藪蛇になりかねん。


「それとさっきの話なんですけど、いいんですか?」


「はい!父も巫覡様なら反対しないと思います!」


 え、与り知らぬとこでなんの約束された?


「なんの密約が交わされたんだ?」


「月巴さん、時間がある時に能力の訓練をしましょう!」




 結局、そこそこ遅くまで女子会は続いた。


 雪はウチのエピソードを恐ろしく抱え込んでて、この世で敵に回してはいけない人間の一人だと思ってる。

 つまり、爆弾エピソードを話そうとしだしたら全身全霊で止める!


 六花の過剰反応もあって恐ろしく疲れた。

 途中で六花がねむねむになったので先に布団に入れた。


 雪が部屋を出る前に4Kムービーカメラを仕掛けていったのは不覚にも見落としていた。


 何もなかったからいいんだが。

ないったらない。




 朝だ。


 謎の疲労感が残ってるが、ウチの爆弾情報は漏らさなかった。

 ミッションコンプリート!

 洗面所に行くと先に雪が歯を磨いてた。


「雪お早よう」


「ふひはおふぁおう。」


 歯磨き粉つけてるとなんとなく喋りたくないの分かる。

 ウチも歯磨き粉を歯ブラシにつけてぐしぐしし始める。

 雪が先に口を濯ぎ、こっちをチラッと見た。


「好きなんでしょ?」


 無言を貫くが視線は露骨に逸らす。


「人は相互扶助する事で個以上の力を出せます。研鑽し、支え、守ってあげなさい」


「あいあとう」


 雪はたまに真面目モードになる。

 本当にいい姉を持った。

 家族を誇れるというのは何者にも代えがたいステータスだと思ってる。



「ところで六花さんと月巴、どっちが受けなのかしらー?」



 ブーーーー!歯磨き粉全部吹いた。


「まてまて!そういうのじゃ無くて…」


「ネコとタチの方が分かりやすい?」


「そうじゃねぇ!」


「この先を見越して、色々心の準備はしておきなさいね!」


 機嫌よく雪が去る。

 やはり六花に近付けると危ない!

 背筋を冷たいものが走った。



 大事を取って学校は休ませてもらってる。

 きっとナミーズから鬼のようにチャット来てるんだろうな。



 何はともあれ家族+六花で朝ごはん。


 今朝はご飯に海苔にお味噌汁に塩鮭だ。

 母さんも小町に負けず和の料理が上手い。

 なんでこの父に嫁入りしたのか謎すぎる。

 聞いてみたすぎる!


「ところで、お父様とお母様お二人の出会いとか結婚はきっかけは?とても素敵なご家庭だから気になります!」



 六花ナイス!面白エピソードに期待!


「私とパパは幼馴染でねー!ほらパパ、コミュ障でしょ?どうも私に気はあったみたいなんだけど、言い出せなかったみたいで…」


 親父のご飯食べるペースがあがった!

 早く立ち去りたいとみた!


「で、中学のある春の日、漸く意を決したのか校舎の外れに呼び出されてねー!」


 クライマックスー!


「小さな八咫烏を飛ばして小さな桜の枝を切り落として、それをそっと差し出して『小さい頃から好きです。貴方が嫌いでも絶対に好きにさせて見せます。』って!」


 親父がそそくさと席を離れた。

 てっきり月が綺麗とか言い出すタイプかと。


「ちょっと強引な位の方が男性は素敵よねー!雪と月は私の子だからそういう傾向あるかもねー!」


「憧れますわねー!雪も少々強引な方がぐっと来ますわー!」


 昨晩多少強引に迫られたなんて言えねぇ。

 横で笑ってんな六花!



「あの人、言葉遣い悪いけど悪い人じゃないからね?嫌わないでいてあげてね」


 いいとこさっぱり見えないんだが?

 家庭が円満なのならいいや。


「月巴さん、まだ学校休みなんですよね?」


 味噌汁すすって六花が聞いてきたので頷く。



「お母様、月巴さんと友人の家に行く予定があったのですが、今日月巴さんと同行しても宜しいでしょうか?」


「どうぞどうぞ!巫覡様がいらっしゃるなら家としても安心です!」


「有難う御座います!月巴さんお借りいたします」


 言葉遣い丁寧な六花の違和感たるや…




 手ぶらで家を出た。


 え?どこ行くの?


 左に進む。


 10歩はあるいただろうか?


 隣の家の門を無断でバーンて開けて、ドアも無断でガチャーンて開けて、ずんずん中に進む。

 不法侵入も甚だしい!



 ここまで見るに俄然犯罪の匂いしかしない!


 恐る恐るリビングルームらしきとこに入ると……ソファでブランケット被った小町が寝ていた。


 …えっ?小町の家、家の隣!?


 今まで凄いニアミスしてたんだなぁ…


 六花がワンピを脱いで着替えだす。やはり小町の服だったか…

 着替えた服は黒いセーターに革ジャン、ジーンズだった。

 小町、ナイスセンス!



「こーまーこーまー!おーきーてー!」


 揺すった瞬間、スパーン!腰のあたりから緑のスリッパを出して六花殴ったぞ。

 手慣れている…


「小町、起きろー!Blu-Ray見に来たぞー!」



 むくり


「ふぁーーー!…お早よう月巴ちゃん!」


 六花殴られ損。

 カーペットにのの字書いてるな。


「二人とも朝ごはん食べた?」


 こくこく

 昨夜家に緊急お泊りした事を話した。


「じゃーお昼は何か作ってあげるね?」


「聞いていいか分らないんだが、小町の両親は仕事中か?」


「うんうん、今フィレンツェに行って職人さんに料理教えてるから二人とも当分帰ってこないかなー?」


「小町の料理上手は家系だったのか…」


「というか食べるのが好きだから作るのも好きっていう単純さよ?」


 いやいやいや、思いつきでいった料理を五分前後で作ってしまうの凄いからね?

 オアシカの冷蔵庫の中どうなってるのかいつか確かめたい。 


「あ、六花!《社》からメール来てたから見ときなさいね?」


「ふぁーい!」


「ちょいちょいちょい!何回か聞いてて疑問だったんだけど…その社って組織、メール出すの?てっきり伝書鳩かなんかだと…」


 小町と六花が顔見合わせて笑う。


「大昔はそうだったのかもしれないけど、今は複合型次世代AIで大きな神様のいらっしゃる場所をなん百人の方がリアルタイムモニターしてるのよ?」


「でも組織の年配の方はネットインフラ信用してなくて伝書鳩と式神の両方スタンバってるらしいですよー!」


 ネット社会がいいのか悪いのか…


「さぁ!飲み物とお菓子持ってきて、小町様おすすめ最新ホラー映画いっちゃうよー!」


「いえーい!(真顔)」


「ではホラー苦手な二人には決めにくいだろうし3択で行きましょうか!」



 ①殺人バトルシャーク

 ②となりがドロドロ

 ③愛と夢の彼方

『③!』ウチと六花がハモった。



『愛と夢の彼方』

 愛を求めて現実を彷徨うも、望むものが得られずとうとう夢の中に閉じこもる主人公。

 だが、夢特有の理不尽な怪物に何度も何度も何度も殺され、目覚める。その内現実と夢の区別が付かず起きる度に毎回違う形の惨殺が繰り返される。



 騙された…がタイトルと中身のギャップあり過ぎだろ…

 ウチにバックハグしてる六花が白い煙出してる!

 小町はジャーキー食べてる!

 ホラー見ながらジャーキーはなんか狂気みが!

 次だ次!!!




 ①マイスウィートフェアレディ

 ②正木正蔵、味噌づくり5年の軌跡

 ③ヘルトイレ




 六花と相談する。

 ③はヘルって書いてるから選択肢から外し、①と②で迷ってる。

 先程は安全そうな横文字映画が怖かったから、②が安全なんじゃないかという六花の意見を尊重して②を選択する。



『正木正蔵、味噌づくり5年の軌跡』

 大手企業家から脱サラし、現在作り手が減っているという味噌づくりの道を目指す正木は実は都内で話題になっていた殺人鬼だった。足がつきそうになって地方の味噌で有名な村に移ってきたのだ。

 味噌が樽で仕込まれる度に何人も村人がいなくなり、逆に正木の味噌は美味しいと話題を呼びヒット商品として売れていく様になる。



 もうタイトルが信じられない!


 確かに全部ホラーって言ってたけどっ!

 もう少し優しい作品あっても良くない!?


 六花がもう白目向いて動かなくなってるよ…



「六花ー起きろー!」


 匂いを感じ取ったのか六花は意外と早く起きた。

 起きたらテーブルの上にはサラダと豚の生姜焼き、ご飯、そしてミネラルウォーターが置かれていた。


「美味しそうー!頂きまーす!」


 相変わらず美味しそうに食べるなぁ!

 豚の生姜焼きってたまに無性に食べたくなるメニューの一品だと思っている。

 ホラーでメンタル死んだ後でも小町の肉料理は美味しい。


「こまこま、月巴さんご馳走様でしたー!」


「バレた!どこを月巴ちゃんが担当したんだと思う?」


「単純に身体の再生能力上がる様に作ってたから、仕上げを月巴さんが一緒に作ってくれたんだなー!って」


「はいはいご馳走様!結婚するまでに月巴ちゃんに小町料理伝授しておくからね!」


 お隣さんにも結婚の話が!

 いや、確かに男は好きになれないしいいんだけど…いいのか?

 まだまだ悩みは尽きないな。




 夕方。


 小町の家を後にする。

 家が隣なので、六花が気を使ってくれたが途中まで送っていくことにした。


「前から思ってたんですが、月巴さんて男前ですよねー!」


 自覚がない!どの辺が!?


「そう見えるのか?」


「見えますよー!今だって帰り道送ってくれてるし!」


「いや、六花はナンパとかされそうに見えるし、危ないかも?って」


「おおおー!これはヤキモチと独占欲がいい具合に出ている!」


「出てねーよ。」



 さっと六花の脇腹を摘む。

「あっ!摘んだら駄目です!月巴さんの前で脱ぐ前に仕上げておきますからっ!」


「そんな機会ないだろ!しっかり食べて傷治せ!」

 

「ふぁーい…」


「…あと、さん付けいらないから」


「……月巴…?」


「おう」


 二人とも怪我したものの、色々な事をカミングアウトして、また距離が縮まった気がした。




 次の日。


 久々の学校。

「ツッキーおはよー!」


「月巴さん怪我は大丈夫ですの?」

 ナミーズが教室に到着した早々に駆け寄ってきた。


「大丈夫大丈夫!ちょっと頭から出血して右腕打撲しただけだから!」


「血が足りなかったらいつでも言ってね!」


 安波が首筋を差し出すがそんな能力ないわ!


「でも元気そうで良かったよ!ツッキーいないと寂しいからさ。へへっ!」


 海波、お前そんなキャラじゃなかったよな?


「と、いう訳で!ツッキーを元気づける会を放課後開催します!コンビニ行って買い食いするぞー!」


「おー!」



 こうやって何だかんだ心配してくれるのはじーんとくる。


 友達っていいものだ。


 放課後コンビニへ行き、色々な物を食べた。


 スイーツから入ってお菓子、駄菓子、レジ前に置いてる唐揚等。

 食 べ る 順 番 バ グ っ て る 


 二人がコンビニコーヒーをブラックで飲んでるのは少し吃驚した。一口貰ったがやはり苦いだけだった。 

 あと、20円とか30円の安い駄菓子でも友達と食べると美味しい。


 結局、幸福感は誰といるかによる所が大きいのだ。



 コンビニで二人と別れた後、いつも通り奈良公園の方による。

 コンビニに寄って遅くなった分、少し薄暗くなっていた。



「六花ーただいま!」


「月巴おかえりー!」



 呼び捨て!自分で言い出したのに照れる!


 ん!と紙袋を渡す。

 中にはコンビニコーヒー(ガムシロミルク多めに持ってきた)とコンビニスイーツ(季節限定安納芋味)を買って入れてきた。


「ほわぁぁあああ!いいんですか?」


「クラスの友達がウチを励ます会とか言ってさっきまでコンビニにいてたんだよ。コンビニスイーツは美味しかったから六花にもあげようかと」


 ハグの予感がしたから紙一重でかわした。


 早速石段に座って、コーヒーにミルクとガムシロを入れ始める。 

 ウチは横に座って六花の表情を眺めてる。

 コーヒーの味を確かめながら安納芋味のロールケーキをパクパク食べてる。


 相変わらず幸せそうに食べるなぁ!

 見てるとこちらまで幸せな顔になる。


「このロールケーキ美味しいですねー!やはり季節限定とかは舐めてかかれません!」


 あーんしてきたから一口食べた。


「今、とても幸せですよ」


「ウチもだよ」



 このまま逢禍なんか出なきゃいいのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る