〈第二章〉Side:姫川京子 a Girl Ⅵ

金曜日の午後。


わたしは、『多文化社会Ⅱ』の講義を受けるために自宅の前で待機していた。


いつもは、14時半にはウェブ会議アプリ内のミーティングルームに「入室」が許可されるはずが、講義が開始する14時45分を過ぎても「入室」できなかった。




そして、15時が過ぎたとき、わたしは理解した。



もう……先生も[終わった]ということを……そして、その[終わり]は、おそらく、先生が選択した……。


これで、わたしにとって、他者とのつながりを認識できる唯一の手段がなくなってしまった。

その事実に、久しぶりにわたしの感情は、揺さぶられた。



怒り。

悲しみ。

諦め。



そのどれでもない限りなく黒に近い灰 色の感情が込み上げてきた。


この感情は……なに?


ああ……そうか……


この感情は……


喜び……?


そう……


これは、唯一の他者とのつながりが切れ、[終われる]ことに対する激しい喜びだった。

そんな歪な感情に支配されるほど、わた しの身心は限界に来ていたのだろう。


だから……

わたしは……


部屋を飛び出した。

そして、真っ白な「世界」を見上げながら叫んだ。



ありがとうございます!

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