〈第二章〉Side:姫川京子 a Girl Ⅴ

『多文化社会Ⅱ』オンライン講義


【沢木】

これで出席者は、姫川さんだけでになりましたね。  


【姫川】

はい。

でも、仕方ないですね。

わたしだって、次の講義に出席できるかわかりません。


【沢木】

はい、私も同じです。

姫川さんは、食事は、どうしていますか。


【姫川】

最近は、コンビニから缶詰をもらってきて食べることが多いですね。


【沢木】

私も同じですね。

少し前までは、カセットコンロを使って自炊をしていましたが、

もう、それも止めました。


【姫川】

どうしてですか?


【沢木】

……もう、疲れましたからです。


【姫川】

……。


【沢木】

話は、逸れますが、私は、始発の電車が好きでした。

特に、平日の都心から郊外へ向かう始発電車です。

この乗客達のほとんどは、

どこか現実離れした雰囲気を持つ人達が多かったです。

私は、気分が落ち込むと、

よく池袋駅から始発電車に乗り郊外へ向かいました。


【姫川】

先生……そろそろ講義を始めてもらえますか。


【沢木】

川越を過ぎたあたりから、落ち込んでいた気分が回復してきます。


【姫川】

先生……そろそろ……


【沢木】

ただ、気分が良くなったとしても、

それは一時のことで、

時間が経てば、今の絶望的な状況に引き戻されてしまいます。


【姫川】

先生……


【沢木】

だから……自ら[終わり]を選びたくなります。 姫川さんも、そう思いませんか?   

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