〈第一章〉Side:私 a Man Ⅱ
テレビやネットで「移民」という言葉が存在感を持ち始めたと思った頃、その影に隠れるようにして一つのニュースが流れていた。
身体が白く結晶化し、死に至る奇病の流行。
ただ、その「白チ病」という通称名が与えられた奇病のニュースは、[予言者コウジョウ]という名とともに広がっていった。
この「白チ病」の存在が世間に周知されるまでに一年、そして、感染者と非感染者の数が逆転するのにもう一年の時間がかかった。
いわゆる感染爆発のような、わかりやすい変化もなく、ただ世界は、淡々と[白]で覆われていった。
そして、「白チ病」は、人口減少、少子高齢化と言われ、暗い未来に向かって歩いていた日本に違和感なく受け入られていった。
それは、規定された未来に至る道程。
この静かに自らの運命を受け入れて行く日本人の姿に世界から多くの「非難」と一部の「称賛」が向けられた。
そして、賛否両者からその日本人の姿は、まるで「殉教者」のようだとの声があがった。
もっとも全ての日本人が、このような「殉教者」になったわけではない。
移動が制限される前に国外へ逃げ出す者はいた。
ただ、その者達も、「白チ病」が日本だけでなく世界規模で発生し始めたことを知ると、自らの行動の無意味さと愚かさを知った。
そして、彼らは、移動が制限された状態では、帰国することもできず異国の地で白い結晶となっていった。
私は、彼らのことを「哀れ」だとは思わない。
また、日本に移民してきた外国人達が、祖国ではなく日本の地で白い結晶になったことも哀れむことではない。
全ては、規定された未来に至る道程。
前者も後者も自らの意思で祖国から離れたのだから。
これも一つの帰結であり、必然である。
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平行世界の物語。
近藤秀将著
『アインが見た、碧い空。あなたの知らないベトナム技能実習生の物語』学而図書。
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