白チ世界〈出版記念改訂版〉@『アインが見た、碧い空。』

Brain B.

〈第一章〉Side:私 a Man Ⅰ

池袋駅北口の階段を登り切ると、昏い灰色の空を背景に大きな「白い塔」が現れた。


それは、圧倒的な存在感。


本当は……確か「豊島清掃工場」の焼却炉の煙突だったはずだ……。



近くで事務所を構えていても、自分とは関係ないと判断した「存在」の認識なんてひどく曖昧になる。


私は、ゆっくりとその「白い塔」へ向かって歩を進めて行く。


その方向に、私の事務所がある。


今では、池袋駅北口から通称「ラブホ街」入口あたりにある私の事務所までの道では、誰ともすれ違うことはなくなっていた……。


道は、細い[白]で覆われている。


いや、道だけではない。


今や私を取り囲む「世界」は……すべて[白]で覆われていた。



生きているモノを敵視する「白い世界」。



それに……もう慣れた。

慣れるしかなかった……あるいは、感覚がマヒしているだけかもしれない。


静かに……ただ静かに「世界」は、[白]で覆われて続けていた。


初めの頃は、ひどく違和感に悩まされていた私も、その違和感の正体さえも思い出せなくなっていた。



もうどれぐらい経ったのだろう……



私を取り囲む「世界」が……“終わり”を始めたのは……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る