第67話

 家に帰った。

 ゆっくりとした音がオーディオから流れてる。

 かずきは壁にもたれて本を読んでいた。

 一ページ、また一ページ。

 繰っていた。

「ねえ、かずき」

 寝そべりながら絵本を読んでいた陽太が顔を上げて頬杖をつく。

「ん?」

 かずきは視線を陽太にやる。

「鉄二と佳奈、元氣かな?」

「元氣なんじゃないか」

 そういえば、佳奈は妊娠してかなりお腹が大きくなっているのではないかと、かずきは思う。

「電話してみて」

「なんでだよ」

「いいから」

 おもむろにかずきは電話を手にとる。

 はい、もしもし

 よお元氣か

 おう、どうしたよ

 いや、陽太が、かけろってうるさくてさ

 あはは、そうか

 佳奈は?

 散歩いってる

 お腹大きいだろ、大丈夫なの?

 運動したいんだと

 動かないのも良くないか、ああ、陽太に替わるわ

 鉄二!!

 よう! 元氣そうだな

 うん! 明日そっち行くよ!

 おう、待ってるな

 じゃね!

 つーつー

「え、明日行くの?」

「行くに決まってる」

「あいついいって?」

「待ってるって言ってたよ!」

 陽太は笑顔で楽しそうにそう言った。

 明日、かずきと陽太は鉄二と佳奈の家に行くことにした。 

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