第62話

 二人は散歩をしていた。住宅街の路地を歩いて。たまにいつもと違うものがあっりする。

「かずき、これなに?」

 陽太が指をさした電柱に、迷子の犬を探してますと書かれた張り紙がある。

なになに。かずきは顔を近づける。

 犬の種類は柴犬。名はおかあさん。

「なんだよ……おかあさんって」

 陽太はきょとんとして、

「どうしたの?」

 と聞いた。

「子供の時からおかあさんって呼ばれてたのかと想像したら、可笑しくてさ。迷子なんだよこの犬」

「ふーん、探してあげる?」

「簡単に見つからねえよ」

 などと会話をしていると、

 わん!

 二人は同じ方向を見た。

「おい、あれ」

「おかあさん!?」

 写真の犬が目の前にいる。

「おかあさんを捕まえろー」

 陽太が走り、

 それに続いてかずきも走る。

「待ってー、おかあさーん!」

 かずきは、道に置かれたバケツに脚をつっこみ、

「あひゃあ」

 勢いあまってつんのめった。

「ぐえ」したたかに顔面をうっていた。

 生け垣に突っ込む陽太。

「どひゃあ」

 脚をばたつかせてる。

「かずき助けてえ」

 かずきは鼻血をだしながらも生け垣に生えた陽太を引っこ抜く。

 オレンジの髪の毛に葉がついている。

 柴犬は二人の方を見て、ニヤリと笑うような表情をした。

 わん!

「あのくそ犬があ、ばかにしてやがる」

 二人は追うのを再開した。

 捕まえようと構える二人。

 柴犬は二つ、股のトンネルを通り抜ける。

 犬を捕まえようとして二人は空を捕まえた。

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