第63話

「捕まえられないー!」

「作戦会議だ!」

 ごにょごにょと相談をする。

「よーし!」

 ここから近いスーパーでツナ缶を買ってきた。

 陽太とかずきはしゃがんで、ツナ缶を置いてみる。

 柴犬は電柱の影から、二人の様子を窺っている。

 チラチラと二人に視線を向けゆっくり近づいてくる。

ツナ缶の手前まで来て、

 しばらく二人を見つめていた。

 そして、ツナ缶に口をつけた。

 少年は、よしよしと頭を撫でる。

 しっぽふりふり。

「お腹空いてたんだね」

 食べ終わったのを見計らってかずきは犬を抱き上げた。

「やっと捕まえた」

「んで、どこに連れていくの?」

「飼い主のとこだろ」

「どこにいるの」

「しらん」

 張り紙があった電柱の方へ戻ることにする。

 わん!

「ここって……」

「来たことあるな」

 インターホンを鳴らしたかずき。

 待ってると、ドアが開いてその隙間から少女の顔が現れた。

 わん! わん!

「おかあさん! どこいってたの!」

 カレンがドアを全開にして、飛び出してきた。

 かずきがカレンに犬を渡す。

 柴犬はカレンに抱かれながら尻尾を振っている。

「かずきお兄さんありがとう」

はちきれんばかりの笑顔だった。

(なんでおかあさんって名前にしたんだろう、カレンちゃん凄いセンスしてるな)

 などと思いつつどういたしまして、と言った。

「陽太君もありがと」

「カレンちゃんのとこの犬だったんだね」

「そう、自慢のおかあさん!」

(紛らわしいな……)

 上がっていってとカレンのママに言われて、かずきと陽太はケーキを食べて帰った。

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