第52話

 陽太が訊ね、悟大がニカッとしながら、

「今日さ節分じゃん、家にあったから持ってきた! がっはっは」

 赤い面をかぶって肩肘を張る。

「節分ってなに?」

 陽太のいつもの質問。

「こうやって鬼に豆をぶつける日!」

カレンは手の落花生を赤鬼に投げつけた。

「あいた!」

 悟大は仮面を外した。

「なんで豆持ってきてるの!」

「節分だからおやつにどうかなあって思って、はい」

カレンは落ちた落花生を割って悟大に渡した。

 ありがとう、と悟大はぽりぽりと食べていた。

「なんで豆を投げるの?」

「なんでだろうな、としの数だけ食べるって聞いたけど」

「パパが言っていたけど福を寄せる力があるとか、鬼の目にぶつけるとかいってたけど」

 確かな起源はよくわからないようだが、中国から渡ってきた風習のようで、魔を滅する、鬼の目を射るなどがある。

「いいなあ、そのお面」

 悟大はお面を陽太に手渡した。

「ほい、今日貸したげる」

「いいの!?」

「家にいっぱいあったし、一個くらい大丈夫だと思う」

「わーい」

 陽太は笑顔で鬼の面を頭にかぶる。

「鬼の面って大人の役なんじゃないの?」

「そうだっけ」

 カレンの疑問に、悟大は上を見る。

「えい!」

 持っていた落花生を陽太にぶつけるカレン。

「痛ーい」

 目がウルウルになる陽太。

 カレンはうっしっしと笑顔を見せてから陽太にごめんねと謝った。

「聞いて、今日たっくさんお父さんに豆ぶつけるの」

 ニンマリとしているカレン。

 それを見て

 陽太、悟大は目を合わせ恐いなと思うのだった。


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