第51話

「離れなきゃいいんじゃないの?」

「そうなんだけどね、難しいの」

 ふーんと少年。

「お姉さんどうしたいの?」

「私は……彼にも来て欲しい」

 少年はそれを聞き、花の咲くような笑顔で笑いはじめた。

「お姉さんわがままだなあ、けど嫌いじゃないよ」

 でしょと答えて女も笑う。それから、指で目元を拭った。  

「ありがとね、聞いてくれて。そうだ、ジュース飲む? なに飲みたい」

 少年は笑顔でココアとかえして、女は自動販売機までいってホットココアを二つ買い、少年にかたっぽう手渡した。

「さえ」

 彼女が後ろを振り返ると、背の高い男がそこに立っていた。

「ゆうじ」

「あのさ、俺、お前と一緒にいたいからお前と同じとこ行くよ」

 ココアの缶が地面に落ちて転がった。

 ぽろぽろと彼女は涙を流した。

「嘘でしょ……」

「嘘じゃないよ」

 男は女を抱きしめた。

 少年はベンチに座りココアを飲んだ。

「あったかい」



「ただいまあ」

「おかえり」

 遊びから帰った陽太。

「かずきぃ」

 呼ばれて、振り向く。     

「ん?」

見ると、小さな赤鬼が握りこぶしを肩の上まで振り上げているではないか。

「福は内ー!」

そう言うや、腕は振り下ろされて、握ぎられていた手が開き無数の何かが向かってくる。

 陽太はかずきの顔に豆を散弾銃の如く投げつけ、

かずきはギュッと目をつむり、瞬間的に痛みを顔に受けていた。

 カラカラと畳に豆が転がった。

「なんで、鬼に豆をぶつけられなくちゃいけないんだよ」

 畳の上に落花生。

 公園にて。

「どうしたのそれ?」

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