第49話

あるだけでお正月だと思わせる力があった。

「なんで昨日、沢山たべもの買ってきたの?」

 びろーんと餅をのばして、陽太は食べる。

「正月だと、スーパーやってないんだよ」

「なんでやってないの」

「みんな、正月休みたいんだよ、だから買っておくんだ、しばらく餅と蕎麦を食べるぞー」

「はーい、次かずきが食べてる醤油で食べてみたい」

「はいよ」

 みかんが上に置いてあるコタツに

 脚を突っ込んで、

 羽織を着てた二人であった。

 

 


 

「おじいさん、いつもお掃除ありがとね」

 陽太は、いつも行く公園の清掃をしてくれている老人にお礼を述べた。

「どういたしまして」

 老人はニッコリとした。

「どっこらせ」

「よいしょ」

 二人は近くのベンチに腰掛けて、老人は手の物を立てかけた。

「掃除が好きなの?」

「そうだなあ、楽しみでやっているなあ」

 白い頭のほうはゆっくり受け答えする。

「君たちみたいな子供が楽しく公園で遊んでいるのが見たくてなあ、もう先も短いからこういうのを楽しみに生きてるんだよ」

空、雲が流れてる。

 鳥、群れになり飛んでいた。

「なんで短いの?」

「ガンってやつでなあ」

「病氣?」

「そうだなあ」

 その声はしわがれていた。

「ふーん、じゃあいつも掃除してくれてるから、きっといいことあるよ」

 陽太はじゃあねとベンチを降り、その場を去った。

 老人は、立ち上がり腰を叩いた。また、箒を手にし掃除をさいかいした。

 翌朝となりこの日老人、病院に行く日であった。

 独特の静けさ、独特のにおい、独特の雰囲氣。沢山のベンチに座る、沢山の人々がいて。

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