第47話

「みんなそこに、並んで! いくよ」

 セルフタイマーをセットし、志乃はいそいそと並びにつく。

 カメラがシャッターの音を刻む。

 あふれる笑顔の子供達とサンタの衣装を着た女と、鹿のコスプレをした男が一緒になって写ってた。

「かずき、プレゼント交換あるから、あそこに寄ってちょうだい」

「おう」

 店の中には、雑貨が山と置いてある。店内を見て回り、陽太は持ってた物をかずきに手渡した。

「これお願い」

 レジにかずきが向かっていった。

 志乃が陽太に問いかけた。

「なににしたの?」

「秘密だよー」

陽太は楽しそうに笑った。

「えー教えてよー」

 かずきはこんな日もわるくないと思った。

「なんか欲しい物でもあるか?」

 なにげなくかずきは聞いた。

「ないよ」

「サンタが困るんだよそれじゃあ」

「勝手に困ってろ」

 十二月の夜は、寒いようであたたかかった。


志乃のマンションの部屋を後に、カレン、悟大はかずき、陽太に送られて自分たちの家についた。

「ただいまあ」

 カレンは胸にテントウムシのブローチをつけていた。

「おかえり、サンタさん来てったよ」

 と母親がキッチンからカレンに声をかける。

「え! まだイブなのに!」

 玄関に靴を脱ぎ散らかして、リビングにカレンがいくと、父親がしゃがんで子犬を眺めていた。

「ワンちゃんだあ!」

 父親の横にきて、カレンは両目を大きくして子犬をじっと見つめだす。

小さなしっぽを可愛くふりふりしてる。

 茶色くて、手と足は靴下をはいているみたいに白い。

「ほら」

 父親がチビをカレンに持たせてやった。

 もふもふしてて温かい。

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