第43話

「パパ、犬飼いたい!」

 だめだと言われ、

「パパのいじわる! 嫌い!!」

カレンはソファに顔を埋めた。

 しばらくたって、嬉々とした顔を上げ、

「クリスマスプレゼント犬頼んじゃおー」と、

 カレンは両親に聞こえる声で、そう宣言をしたのであった。

「他のにしたら?」

 父親がそういうと、かたくなに、

「いやだね」

「サンタさん嫌がるよー」

「パパなんて知らない!」

カレンは言った。

「パパとしばらく口聞いてないの」

「無視はよくないよ」陽太

「お父さん、かわいそ」悟大

「かわいそうなのは私よ! ほんとパパの顔なんて見たくない! クリスマス、パパがいるし家にいたくない!」

「おれも、クリスマスは家に兄ちゃんいるっていうし、あんまりいたくないなあ」

悟大には歳の離れた兄がいた。

「よいしょ」

「なに兄ちゃん?」

 悟大の兄は、弟を抱き上げて、背の高い冷蔵庫の上に置いた。

「うわーん!」

 悟大は、自分だけではおりられず、泣きじゃくることしかできなかった。

 ある日、ソファでお昼寝をしていると、なんだか鼻の氣持ちが悪い。

 悟大の兄がペロペロと悟大の鼻を舐めているのだ。

「ぐわああああああ!」

 悟大は泣いて、鼻を洗いに流しへ走る。

悟大の兄が、バスケットボールで遊んでいた。

「あ、やべ」

 ボールはあらぬ方向へ。

 バキっ。

 悟大が好きなガリュオン(アニメのロボットのプラモデル)が下敷きとなる。

「兄ちゃんなんて嫌いだ」

 そう言って今日も、ぷりぷり、出かけていった。

「そうだ」

 カレンは自慢げな笑みを見せ、パン! と手を叩いた。

「陽太君のお家でパーティーをしましょうよ」

 その顔は目の前に光景を思い描いて輝いていた。

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